テレビの東大ブームが止まらない。頭脳対決のような王道から感動バラエティーまで、連日のようにテレビ欄を賑わせている。4月からは、現役東大生をメーンにしたクイズ番組もスタートする。民放関係者によれば、今や「ラーメン、ダイエットと並ぶ手堅いコンテンツ」という。

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 民放関係者によると、ファミリー層の視聴をねらいたい制作側にとって、東大は「謎の引き」がある切り札なのだという。「格差社会が広がる中、親御さんにとっての最大の関心事は教育。なんだかんだこの国は学歴社会で、その頂点として東大ほど分かりやすいキーワードはない」。お勉強番組の需要が増える中「どうせ見るなら学歴最高峰」というスペシャル感が東大ブランドにはあるという。

 実際、テレビ欄の東大濃度はすさまじい。最近だけでも、テレビ朝日「Qさま! 現役東大生&京大生が選んだスゴイ建造物」、日本テレビ「深イイしゃべくり合体SP 東大卒の女性は幸せ?」、TBS「中居正広の金スマ 東大卒がログハウス建設」、フジテレビ「今夜はナゾトレ 東大生&京大生が出題ひらめきクイズSP」など、書ききれない多さだ。

 「Qさま!」が10年くらい前から「東大VS京大」などの人気企画でけん引してきたジャンルだと思うが、いつかブームも落ち着くどころか、「ネプリーグ」(フジ)の「東大VS京大」などあらゆるクイズ番組に派生しいていった。クイズ番組以外にも、「東大脳から学ぶスーパー記憶術」(テレ朝「林修の今でしょ!講座」)、「天才東大生からの挑戦状」(フジ「今夜はナゾトレ」)、「東大生30人と大激論!」(TBS「好きか嫌いか言う時間」)などあらゆる切り口で東大が扱われている。

 ひと昔前までは、「勉強はできるが変人」「勉強はできるがモテない」など、上げて落とすパターンを担わされることが多かった東大生だが、昨年スタートしたフジの不定期特番「さんまの東大方程式」以来、面白さや人間味などの分野にもフォーカスされた始めた。東大生40人と、明石家さんまのお笑い偏差値の化学反応で、女性観が鋭すぎる男子や、チャラすぎる東大生などのナイスキャラを引き出している。

 フジ編成企画の武田誠司さんは「明石家さんまさんを知らないというびっくり人間がいるのも東大ならでは。こちらのルールの圏外にいて面白いんですよね」。今の現役生は、高田万由子、菊川怜らバラエティーで活躍する東大卒をテレビで見て育った世代で、「テレビだからといって構えない」スキルもあるという。東大ブームについて「学歴社会ではなく実力社会といわれて久しいですが、子育てをしていると、そこまで強く言える実感がない。まだ学歴社会に引きずられているようにも感じる中、やはり東大ブランドは分かりやすい」。

 4月からは、日曜のゴールデン枠に東大生を中心にしたクイズ新番組「東大王」(TBS、日曜午後7時)も登場する。選抜された現役東大生トップ3が“知力の壁”となり、さまざまな人の挑戦を受ける。

 TBS編成部の岸田大輔さんは「『この問題が解けたら東大に行けるかも』とか、親子であれこれ会話が膨らむのは東大ならでは。絶対的存在を挑戦者が打ち負かす、いわゆるジャイアントキリングの醍醐味もある」。自身も勉強バラエティーに親しんできた世代。「小学校のころに親と一緒に『平成教育委員会』を見ていました。東大出身の解答者がいるとやはり注目しましたね。僕は東大じゃないんですけど」。

 昭和のころの東大芸能人といえば、渡辺文雄さん、加藤登紀子さんなど、独特の迫力と雰囲気を持つレアな存在だった。今やお笑い系で東大チームを作れるほどカラフルな存在となった。タレントのオプションとしてカジュアル化してきて、いろいろ隔世の感がある。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)