作品賞と主演男優賞の2冠を獲得した「64 ―ロクヨン―」の瀬々敬久監督(56)は「浩市さんあってのこの映画だと思います。浩市さんが現場を背負って立って、俳優たちを束ねてくださった。若い俳優の背中を押してくださった」と感謝を口にし、何よりも佐藤の主演男優賞受賞を喜んだ。

 脚本の段階から、佐藤と話し合いを重ねていった。「(主人公の)三上像を綿密に作り、撮影に入る段階で出来上がっていました」というところまで詰めていたという。

 昭和最後の7日間に起きた事件と、その後を描いた作品。瀬々監督は「アクション、パニックがあるわけでもなく、芝居で見せていく作品です。こういう地味な作品が受け入れられたことで、日本映画の可能性が広がっていくと思うとうれしいです」。【小林千穂】

 ◆64―ロクヨン― わずか7日間で幕を閉じた昭和64年に起きた、少女誘拐殺人事件をめぐるサスペンス2部作。警察上層部と記者との板挟みに苦しむ警察広報の男(佐藤浩市)が、刑事時代に担当した誘拐事件を模倣したような事件に直面する。瀬々敬久監督。

 ◆瀬々敬久(ぜぜ・たかひさ)1960年(昭35)5月24日、大分県生まれ。京大卒業後、89年「課外授業 暴行」で監督デビュー。その後「感染列島」「フライング☆ラビッツ」などを手掛けた。10年「ヘヴンズ ストーリー」、11年「アントキノイノチ」は海外映画祭にも出品され、それぞれ最優秀アジア映画賞、イノベーションアワードを受賞している。

 作品賞・選考経過 「64 ―ロクヨン―」が「スケールの大きさ、俳優のものすごい演技など映画のだいご味を味わった」(石飛徳樹氏)などと評された。「未来に希望を感じる今の時代の意欲作」(福島瑞穂氏)と推された「君の名は。」との決選投票を制した。