宮沢りえ(43)は、胸元が大きく開いた、セクシーな黒の衣装で舞台に立ち、受賞の喜びを熱く語った。

 「(日刊スポーツ創刊)70周年という、すごく記念すべき年にいただいて、うれしく思います。私は自分の映画を映画館で見ることはないですけど、初めて興行的な映画を撮る中野監督が、評判がいいというので、映画館の1番後ろの席で見ました。スクリーンの中の私の演技については反省点、もっとこうすればいいということばかりですけど、スクリーンと自分の間に、たくさんのお客さんがいてくださって、笑ってくださった。仕事をさぼったかな、というサラリーマンが、大きなタオルで顔をぬぐっていた。映画に参加することの意味を感じました。これからも、どんな作品であれ、心を揺さぶるような表現を出来るように頑張ります」

 「湯を-」では、がんで余命宣告を受けた母を演じた。家業の銭湯を放り出して出て行った夫(オダギリジョー)を連れ帰り、いじめに遭う娘(杉咲花)を立ち直らせ、夫の連れ子(伊藤蒼)を愛を持って包み、一家を再生させる母を演じた。難しい役どころを、文字通り全身で、体当たりで演じた姿が感動を呼んだ。

 宮沢にとって、14年「紙の月」以来、2年ぶり2度目の主演女優賞受賞となる。同年9月に母光子さん(享年65)を肝腫瘍で亡くし、2年前の授賞式では「愛してくれた母がいたから、今の自分がここにいるとお伝えしたい」と母への感謝の思いを語った。そして、この日も、母への思いが、ストイックな役作りにつながったと明かした。

 「台本に最後『体がむしばまれて目がギョロリとほおがこけ』と書いていた。メークである程度、できるんですけど、母が同じ病気で亡くなった。(演じた幸野双葉が)同じように命を全うされたことを考えると、リアリティーを出さないとと思って(やせるために)撮影を休んだ。簡単にやせるかな、と思ったけど…最後はボクサーのように水分を取らないでやりました。終わった後のビールが、おいしかったです。脚本にすごく背中を押されながら演じた。演じたとはいえ、その女性を生きたのは私の人生の一部です」

 前年受賞者の綾瀬はるか(31)が、楯のプレゼンターとして登壇した。綾瀬は、宮沢とは対照的に白を基調とした清楚(せいそ)な衣装を身にまとい「いつも力強くて、いつも女優さんとしても輝いていらして、本当にすてきで憧れます」と宮沢を祝福した。

 花束プレゼンターとして登壇した、娘役の伊藤蒼(11)は「お母ちゃんは撮影中、私が大変な後、ギュッと苦しいくらい抱き締めてくれて、優しかった」と振り返った。その瞬間、宮沢は満面に笑みを浮かべ、母の顔になった。【村上幸将】