「さらば あぶない刑事」の舘ひろし(66)と柴田恭兵(65)は、サングラスをかけ、劇中で演じるタカ(鷹山敏樹)とユージ(大下勇次)そのままの姿で、さっそうとステージに現れた。

 86年に日本テレビ系でドラマが始まってから30年。2人のそろい踏みは、今年2月10日に東京・丸の内TOEIで行われた大ヒット御礼舞台あいさつが、最後のはずだった。それが石原プロの創始者・石原裕次郎さんの名を冠した賞の授賞式という、晴れの舞台で“門外不出”の2ショットが、再び実現した。登壇時、会場内には舘が歌う主題歌「冷たい太陽 ファイナルバージョン」が流れた。石原まき子会長から柴田に賞金300万円を、共演の木の実ナナから舘、柴田に花束が贈られ、舘は木の実と熱い抱擁をかわした。

 柴田は300万円の使い道について聞かれ「この300万を、どうやって分配するか。舘さんは身内だから…バイク乗ってショットガンぶっぱなしただけなので。僕は、この年で結構、走りましたので多めに。(町田透役の)仲村トオルくんには、3万円くらいかな。監督と後で相談します」とジョークを交えて答えた。

 それを聞いた舘は「何か…ちょっと手前みそと思ってますけど。300万、辞退したんですか? 1作目の公開の時、裕次郎さんが亡くなられた。初日は満杯だった。パンフレットを持って、成城に行ったのを覚えています。30年たって、賞をもらえた」と、裕次郎さんの思い出を交え、受賞の喜びをかみしめた。

 裕次郎さんの名を冠する賞に、ふさわしい作品だ。劇中には、裕次郎さんの代表作「夜霧よ今夜も有難う」(67年)でも撮影に使用した教会が登場する。「夜霧よ-」の助監督を務めていた村川透監督が、裕次郎さんを車で送り迎えしていた頃から知っていた場所で、昭和感のある横浜の風景を撮ろうと、狙って選んだ場所だ。そこで、舘演じるタカと恋人夏海(菜々緒)との別れのシーンを撮影した。村川監督は壇上で、興奮気味に受賞の喜びを語った。

 「いやはや、驚いたことに…昨日まで何の連絡もなかったところ、ここに出てきたら足元がよろけた。舘さんが背中を押してくれて、さらに足元がよろけた。カメラマンの仙元(誠三)から『監督、酔っぱらってるんじゃないよ』と言われた。アメイジング。30年も持ったすばらしい映画魂。裕次郎さんには3度、助けられた。(1度目は)私が日活に入った時、裕次郎さんは大スターで太陽だった。助監督で入った幸せをかみしめた。何て幸せな世界に入ったんだろうと。(2度目は)田舎に帰った私を、映画界に引き上げてくれたのも裕次郎さんとまき子さん。そして3度目…こんな舞台に立てるとは思わなかった。幸せの極に達している」

 石原まき子会長は「まさか、村川さんが私よりずっと年下なのに、2人に抱えられて登壇すると思わなかった。恭兵さんとひろし君に抱えられて、私が登壇したかった」と目を細めた。

 前年受賞者として楯のプレゼンターを務めた原田真人監督(67)は「(受賞は)日本映画の原動力。映画を知らない20代の時に、村川監督のお宅に伺って隣に寝たのがすごく心に残っている。緊張しております」と受賞をたたえた。木の実は「(シリーズを続けた30年は)ご苦労でもなかった。楽しかった。絶対に、いない刑事たち…格好いい人がやっているのはいいですよ。石原裕次郎さんも本当に格好いい」と満面の笑みを浮かべた。【村上幸将】