女優松井玲奈(25)が8日、沖縄の世界遺産「中城城跡(なかぐすくじょうあと)」で上演された舞台「新・幕末純情伝」で主演した。700年の歴史ある城壁にはプロジェクションマッピング(建物や空間などに映像を映し出す技術)で映像が投影され、壮大な屋外舞台で艶やかな殺陣を披露した。

 月明かりとスポットライトだけの漆黒の舞台に、深紅の衣装の松井が浮かび上がる。何人もの男たちを次々と切り倒して見えを切ると、600人の観客がどよめいた。吹き抜けの舞台からは追い風で、スモーク(演出の煙)が渦を巻いて客席に迫ってくる。舞台背後の城壁には、最新のプロジェクションマッピングで多彩な映像が映された。屋内ではあり得ない3重の奥行き。屋外舞台ならではの臨場感が、歴史ある作品に新たな魅力を引き出した。

 松井も「こんな貴重な機会をいただけたことに、ただただ感謝です。今後の自分のためにもいい経験になりました」と感慨深げに振り返った。

 昨年夏に上演された今作は、今月3、4日に松井の故郷愛知・豊橋と、この沖縄の「第1回中城演劇フェスティバル」の招聘(しょうへい)作品として特別に再演された。最近、MISIAや山崎まさよし、秦基博らのコンサートが開催されるなどエンターテインメントの場として活用され始めている中城城跡だが、演劇は今回が初めて。浜田京介・中城村長は「歴史ある世界遺産で、あの『新・幕末純情伝』が開催できることは心から光栄です」とコメントした。

 名劇作家つかこうへいさんの代表作で広末涼子、石原さとみ、桐谷美玲らを継いで新選組の沖田総司役を演じた松井は「あらためて作品の重みも感じて演じさせていただきました。いい新年のスタートになりました」。照明も落ち、月明かりだけの夜空を見上げて、新たな志も芽生えさせているようだった。【瀬津真也】