13部門14ノミネートは、「タイタニック」以来20年ぶりのアカデミー賞最多タイ記録だそうだ。

 米映画「ラ・ラ・ランド」はアカデミー賞発表の3日前に当たる24日に日本公開される。受賞発表に合わせたような公開日は、配給会社が結果に自信を持っているからだろう。

 確かに往年のミュージカルの匂いをさせながら、現代性も織り込んで見どころ満載。楽しめる作品に仕上がっている。

 だが、この高評価に一番驚いているのが実はデイミアン・チャゼル監督(32)自身ではないかと思う。

 彼が注目されたのは一昨年のアカデミー作品賞にノミネートされた「セッション」だが、実現までにはけっこうな道のりがあった。

 出資者を募るため、まずこの作品の短編版を製作。これがサンダンス映画祭の短編部門で最優秀賞となって注目され、ようやく本編作りの入り口に立つことが出来たのだ。ハリウッドが一筋縄ではいかない所だということを嫌というほど知っているのだ。

 「ラ・ラ・ランド」に主演したライアン・ゴズリング(36)とともに先日来日した際は「最初にノミネート数を聞いたときは、喜びというよりはショックの方が大きかった。発表を聞いたときにライアンが一緒にいてくれたのでシャンパンを抜いたんだけど、お祝いというよりはドキドキを鎮めるためだった」と心境を明かしている。

 会見では、監督が「後からたまたま知ったんですけど、この映画の音楽を入れたスタジオが『オズの魔法使い』や『雨に唄えば』と一緒だったんです。名作ミュージカルとともにあると思ったら、それだけでうれしくなった」と振り返ると、横にいたゴズリングが「そのネタ、さっき僕が教えたばかりじゃない」と笑わせる。そんな掛け合いが続き、コンビネーションの良さをうかがわせた。

 劇中でも、ゴズリングは歌に踊りにピアノとスゴ技を見せ、監督の期待に応えている。ティム・バートン監督とジョニー・デップのような盟友関係を築いていくような予感がする。

 「ラ・ラ・ランド」は作品そのものに止まらず、ハリウッド映画の将来への期待も広げている。