劇団四季の創立メンバーの1人で、重厚な演技と知的な語り口で知られた俳優の日下武史(くさか・たけし)さん(本名孟=たけし)が15日、誤嚥(ごえん)性肺炎のため、旅行先のスペインで死去した。86歳だった。葬儀・告別式は親族のみで行い、後日お別れの会を開く。

 4月20日に舞台「ブラック・コメディ」の稽古に顔を見せるなど元気な様子だった。しかし今月に入って、知人が住むスペインのマヨルカ島に妻の女優木村不時子(78)と静養のために出掛け、そこで体調を崩し、入院先の病院で亡くなった。現地で荼毘(だび)に付した後、帰国する予定。

 慶大在学中の1953年(昭28)に浅利慶太氏と劇団四季を結成。54年の旗揚げ公演「アルデール又は聖女」以来、四季の看板俳優として「エクウス」「ヴェニスの商人」「スルース」「鹿鳴館」など翻訳劇を中心に古典から現代劇まで幅広く出演した。映画やドラマでも独特の存在感を醸し出す脇役として数多くの作品に出演。テレビ草創期の61年に海外ドラマ「アンタッチャブル」のエリオット・ネスの吹き替えを務めるなど洋画の声優やナレーションでも活躍した。14年の劇団四季「思い出を売る男」が最後の出演となった。

 私生活では長年介護していた前妻を見送った後、10年に劇団四季に在籍する木村と再婚。2年後に公表した時、日下さんは81歳、木村は73歳という高齢の結婚として話題となった。

 ◆日下武史(くさか・たけし)1931年(昭6)2月24日、東京都生まれ。慶大在学中の53年、浅利慶太氏と劇団四季を創立、俳優として活躍した。代表作は舞台「エクウス」「ひかりごけ」「鹿鳴館」など。映画は「南極物語」「まあだだよ」、ドラマはNHK連続テレビ小説「すずらん」、NHK大河ドラマ「新・平家物語」など。96年紫綬褒章、02年旭日小綬章。