新人女優・石橋静河(22)が、石井裕也監督の新作映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」(27日全国公開)で、初めて主演した。石橋がニッカンスポーツコムのインタビューに応じ、映画への思い、女優としての今後など赤裸々に語った。第1回は撮影の裏側で感じていた思い、感情を吐露した。

 「夜空はいつでも最高密度の青色だ」は、詩人最果タヒ氏の16年の同名詩集を、石井監督が東京で男女が出会う恋愛ものとして脚本化し、実写化した。11年3月11日に発生した、東日本大震災後の東京を舞台に、息苦しい現代に居場所を失った若い男女が出会い希望を見いだす物語だ。

 石橋演じる美香は、昼は看護師、夜はガールズバーで働きながら不安と孤独を抱えている。そんな日々の中、建設現場で働く慎二(池松壮亮)と出会う。ぶっきらぼうな2人は、互いに本音をぶつけ合い、近づいては離れる関係を続ける。スクリーンの中を駆け、何かにしがみつくような必死な目をしてスクリーンの中にいる、石橋が印象的だ。

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 -初主演。石井監督の演出は厳しかった?

 石橋 主演は本当に初めてです。難しかったです。セリフ(を覚える)だとか言っていられないくらい、本当に日々、戦っていたという感じです。

 -詩集から石井監督が創作した脚本。せりふ回しが独特

 石橋 自分の中で、何か比べるものがなかったので。それまで、こういう作品をやったから、これはこういう作品だという…自分の中でそういう理解が出来なくて、漠然とした、どういうものなのか分からないけれど、やらないといけない、しがみついているような気持ち。本当に全てが難しかったです。もちろん、監督は今、私がまだ本当に何もない状態なのは分かっていらしたけれど、そこに対する妥協は一切なくて。現場では本当に、そうじゃない、そうじゃない、そうじゃないと常に言われていましたし。そうじゃないということは、こういうことかな、という明確な考えが、自分の中でパッとに出てくるわけではないので。毎回、毎回やってみて違うと言われ、やってみて違うと言われるのを繰り返して…多分、切羽詰まった状況の顔は映っていると思います。

 -フィルムの中で生きることに全てを注いだ

 石橋 注がざるを得なかったという感じではありますね。演技がどんなものかも、まだ自分の中ではっきり分かっていないのもありますけど…全部でぶつかるしかなかった感じ。(監督は)ウソや中途半端な芝居は絶対、見抜くし、スタッフ、キャストももちろんそうだし、現場にあるものも何を撮りたいかも、全てのことを見ているし、見えているんじゃないか、と思うくらいの人。やった分だけ報われるというか、見てもらえないという不安はなかったですけど、ただ、そこまで見抜く人だから、自分の持っているものを本当に全部ぶつけるしかない…その繰り返しでした。それは、ある意味、石井さんの愛情なのかなと思うし。

 -美香をどういう思いで演じていた?

 石橋 言う言葉が、すごく強いじゃないですか? 乱暴で、そんなこと言っちゃうの? と普通だったら思うようなことも言ってしまったりとか、普通ならこう言うでしょ? ということを言えなかったり…。最初は何でだろうと思ったんですけど、美香を知っていくうちに、言っている言葉はある意味、本当だし、本当でもないという…自分の中にあるものに正直にいたいし、伝えたいと思うんだけど、なかなかうまく生かない人だというのが分かってきて。そう思い始めたら、すごくすてきな美香を、もっと分かって、ちゃんと見詰めたいと思ったし、100%出来なかったとしても、そうし続けたいなと。自分の中に技術や手段がなくても、気持ちだけは、ものすごく強くありました。

 -そう考えられる環境にしたのは石井監督

 石橋 そういうことですね。違う、違う、違う…って言って(苦笑い)本当に監督が言いたかったのが、どういうことだったのかは、今の私では分からないというか…それは、これから女優を続けながら分かるんだと思うし。これをやったことの重みとかが、まだ全然分かっていないというか…。ただ、ものすごい衝撃だったというのは、身をもって感じたし。痛いだけではなくて、ある意味、すごく喜びでもありました。