映画監督の山田篤宏氏(37)荒木伸二氏(47)が26日、都内で、第1回木下グループ新人監督授賞式に出席した。

 同賞は昨年9月から今年の1月にかけて、脚本を含む企画案を応募。河瀬直美監督(48)が審査委員長を務め、241の応募作品の中から山田氏の「AWAKE(仮題)」がグランプリ、荒木氏の「人数の町」が準グランプリを受賞した。

 「AWAKE(仮題)」は将棋をモチーフにした作品で、「将棋電王戦」でプロ棋士がハメ手でAIに勝利した実話を元にしたオリジナルストーリー。山田氏は「脚本を書くこと自体が苦手だったので、それを評価いただけたのはとてもうれしいです」と話した。映像ディレクターとして乃木坂46「君は僕と会わないほうがよかったのかな」「13日の金曜日」ほかミュージックビデオやテレビドキュメンタリー、舞台収録の演出などを手がけるが、「商業映画を撮りたかったので、ここを通過点として映像を作り上げるのを最終目標としてがんばりたい」と意気込みを語った。

 将棋をテーマにした作品はすでに多数あるが、河瀬氏は「同作には選ばれし者と選ばれなかった者の間に横たわる違いや葛藤を丁寧にすくい上げ、人間ドラマに昇華している」と寸評を寄せた。自身も将棋ファンだというが「3年前に携帯アプリで将棋をやってはまった。まさかこんなブームになるとは思っていなかった」と話した。

 準グランプリの「人数の町」は241応募作品で唯一のSF作品。借金を踏み倒し路頭に迷っていた主人公が声をかけられた男につれてこられたのは、個人ではなく人数を全うする世界という哲学的SFストーリー。「20年前くらいから構想はあった。個人ではなく人数として扱われるとぞわぞわっとします」と話し、「今回河瀬さんが審査委員長ということで『世界で勝負しろ』というメッセージを感じて応募しました」といい、「第1回はいいですね」と受賞の喜びを話した。

 両作品には上限5000万の制作費が与えられ、キノフィルムズで開発をスタートする。