6日に亡くなった伝統芸能「太神楽(だいかぐら)」の曲芸師、海老一染之助さん(享年83)の通夜が10日、東京都中野区の東光寺で営まれ、約250人が参列した。

 喪主で妻村井秀子(むらい・ひでこ)さん(81)が亡くなる前日の様子を明かした。秀子さんは、先月28日に肺炎で入院した染之助さんを見舞い、帰る時、染之助さんの額に、自分の額を当てた。「初めてそんなことしたんです。虫の知らせだったんでしょうか。『お父さん、頑張ってね。また明日来ますね』と言ったら、うなずいていました」と話した。翌朝、容体が急変し、最期には間に合わなかったという。

 染之助さんは「何でも命がけで」が口癖で、秀子さんは「その通りの稽古をしてました。『六十何年間、1度も落としたことがないんだよ』と言ってましたけど、それだけの稽古をしてました。それは真剣白刃でした」と、明るい芸風の裏にあった努力を語った。

 祭壇には、兄で02年に亡くなった染太郎さんとのコンビ、海老一染之助・染太郎時代の写真、舞台で使っていた傘、まり、どびん、口にくわえて使うばちが飾られた。斎場には寄席ばやしが流れ、生前の活躍をしのばせた。棺(ひつぎ)には、傘とまりを納めるという。秀子さんは「天国に行って、染太郎さんとコンビでやってくれるんじゃないかと思っています」。戒名は至藝染朗信士(しげいせんろうしんじ)。葬儀、告別式は11日午前11時から同所で。【小林千穂】