6年7カ月と平成以降2番目の長期在位で、11月18日付に宝塚歌劇団を退団する月組トップ娘役、愛希(まなき)れいかが16日、兵庫県宝塚市の同劇団で退団会見を開き、退団後の夢について「夢は大きく、世界を目指したい」と語った。

 愛希は昨年1月、世界的な演出家トミー・チューン氏が手がけた「グランドホテル」にバレリーナ役で出演し、ヒロインを務め、同氏が愛希を称賛。会見に同席した劇団の小川友次理事長によると、同夏、理事長が渡米した際、同氏と会食し「彼女はすばらしい。ブロードウェーの舞台に立てる。後は言葉さえ覚えればいい」と、素質を絶賛されたといい、この日、愛希に伝えた。

 これについて、感想を聞かれた愛希は「ブロードウェー…考えたこともないんですけど…」と、いったんは言葉を失いながらも「せっかく…ですので夢は大きく。世界は目指したいですね」と笑顔で返した。トミー氏が問題にした語学については「日本語しかできません」と笑わせた。

 愛希は09年入団。男役から娘役に転向し、1年足らずだった12年4月、前トップ龍真咲の相手役に迎えられ、トップ娘役に就いた。安定した歌唱力、ダンスと、柔軟な芝居心に磨きをかけ、15年4月には「1789-バスティーユの恋人たち」でマリー・アントワネット役を好演。男役出身らしい強さを内に秘め、はかなげなルックス、かれんさで魅了してきた。

 「1789でマリー・アントワネットを演じ、ターニングポイントに。新たな挑戦をしたいと思い、いつ卒業しても悔いはないと思いました」

 その後、劇団と相談し、龍の卒業を見送り、昨秋からはトップ珠城(たまき)りょうの相手娘役も務めてきた。

 「龍さんの相手役をさせてもらっていたころは、本当に何もできなくて。龍さんは今も私にとって恩師です。そんな私も、今は、舞台が楽しいと思える。そこが成長ですかね」と、振り返った。

 龍にも卒業を報告し「楽しんで」と言われたといい、珠城とは最後まで全力を誓い合った。身長が伸びすぎ、いったん男役を経験したが、もともとは娘役志望。「伝統的な清楚(せいそ)な娘役を目指してきて、それは今も変わらない」と、究極の娘役像を求める。

 いちずな“宝塚愛”が長期在位を支え、新鮮みを失わせない理由のひとつ。小川理事長も「(宝塚)音楽学校の生徒も、一番あこがれで名前が多く出るのが愛希」と言い「尊敬され、あこがれる娘役でいてくれた」と感謝した。

 その“ごほうび”として「スペシャルステージを用意した」と言い、劇団では異例の主演舞台も用意。宝塚バウホール主演公演「愛聖女(サントダムール)」(7月1日~7日)も決まった。

 トップ娘役の主演は、02年に退団した月影瞳の「Over The Moon」(01年)以来。愛希は「信じられなかった。いつも男役さんの力によって舞台にいられるので…」と恐縮しつつも「でも、挑戦していきたいです」と力を込めた。

 この日の衣装は白いワンピース。すでに卒業した同期の元宙組トップ娘役、実咲凜音(みさき・りおん)と相談して決めたという。

 今春から入団10年目に入り、入団当初、母に誓った「10年」に届く。男役で入団したために「母には、男役10年だから10年はいるからって、言ったんですけど、でも、娘役になったから無理かと思っていた。でも、母に『10年いたよ』って言えます」と胸を張っていた。

 愛希は、8月24日に兵庫・宝塚大劇場で開幕する「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」の東京宝塚劇場公演千秋楽となる11月18日付で退団する。