デーモン閣下がNHKのアニメ番組で自身の肖像を無断使用されたとして局に対応を求めた問題で、弁護士たちがそれぞれの見解を示して激しく議論する場面があった。

 デーモン閣下は15日のブログで、2月28日に放送されたNHK Eテレ「ねこねこ日本史」の第64話「破天荒シンガー、高杉晋作!~破天荒度MAX編~」に登場したキャラクター「デーモン風高杉」について、「吾輩の肖像が吾輩に何のことわりもなく使用されているようだ。『デーモン風高杉』という名だが、『風』ではなく『吾輩』そのものであり、高杉の要素はむしろみじんも感じられない。デザイン上『偶然』とか『たまたま』似てしまった」ではなく、名前も含めて明らかに【吾輩の姿の無断使用】である」と指摘。「不快である。心身の損害を被っている」とし、同局に対し「誠実な対応を求む」と呼びかけた。

 22日放送のフジテレビ系「バイキング」はこの問題を取り上げ、弁護士たちがそれぞれの見解を示した。元裁判官で国際弁護士の清原博氏は「無断使用しても肖像権の侵害にならない可能性が高い」との見解。芸能人の肖像権侵害に当たる主なケースとして「芸能人の氏名や肖像を勝手に利用して金もうけをしているケース(パブリシティー権の侵害)」「本人のイメージが著しく害されたり感情が強く傷つけられるケース」の2つを挙げ、今回の件はこれらに該当しない可能性が高いとの見方を示した。

 一方、芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会」共同代表理事を務める佐藤大和弁護士は、今回の件は「社会生活上の受忍限度(※我慢の限界)を超えている」として肖像権の侵害になる可能性が高いとの見解を示した。

 佐藤弁護士は「清原先生のご意見はもっともなんですけど、聞いているとやっぱり元裁判官ふうの意見だなと思う。証拠からしか、相手の気持ち、デーモンさんの気持ちを読み取れていない。本人の気持ちに寄り添う弁護士であればこれは違法ですよ」と清原弁護士に反論。MCの坂上忍も佐藤弁護士の意見に賛同し、「我慢の限界を超えたからブログに載せたわけですよ。ブログに載せるということは公になるから、怒りの感情をつづりながらも、抑制するところは抑制した文章があれだと思う」とデーモン閣下の胸中を推し量った。

 佐藤弁護士から反論を受けた清原弁護士は「反論になってませんよ」とはねのけ、「気持ちをくむというのは重要ですよ、私も当然、気持ちをくんでますよ。デーモンさんのブログを3回くらい読みました。かなり怒ってるなとは伝わりましたよ。でもその怒りの内容というのが、『業界として事前の連絡を取りなさいよ』というマナー違反だからということの不満。あのイラストから『私のプライドを傷つけられた、恥ずかしい思いをした。どうしてくれる』のというその怒りはなかったと思う」と主張した。

 これに対し佐藤弁護士は再び「これが裁判官の、証拠からしか見てないんですよ」と批判したが、清原弁護士も「逆に言うと、あなたデーモンさんと電話したんですか?」と応戦。「推測だけでしゃべっちゃだめですよ。これはメディアなんですよ、居酒屋の会話じゃないんですよ。裏を取ってないことをしゃべって自慢して私のことを非難するんですか。おかしいでしょそれが!」と声を荒らげる一幕もあった。

 佐藤弁護士も「(ブログに)『心身の損害』って書いてあるじゃないですか。感情をしっかり見ないといけない。芸能人の肖像権は軽く見ちゃいけないんですよ」と食い下がり、舌戦を繰り広げた。フットボールアワーの後藤輝基は日本テレビ系「行列のできる法律相談所」を引き合いに出し、激しくやり合う2人に「スカウトが来る可能性がある」とつぶやいて笑いを誘った。