3月28日に急性肺線維症で他界した落語家月亭可朝さん(本名鈴木傑=すずき・まさる、享年80)のお別れの会が24日、大阪市内で行われた。

 型破りだった故人の生きざまに合わせるよう、献花前には生演奏の出ばやし後、ヒット曲「嘆きのボイン」が流された。多くの人に愛された故人の人柄は、出席者が披露した仰天エピソードでも色濃く浮かび上がった。

 開会のあいさつに立った可朝さんの一番弟子、月亭八方(70)は、報道陣を前に「(可朝さんが)囲まれるんは、ストーカー(規制法違反容疑の逮捕)以来ちゃいますか? 本人照れてるかも」と笑った。

 68年の入門時「人生はばくち場や。ばくちの強い順から舞台に上がれる。ばくちに負けはない。今日負けたはあっても、また明日はもっと勝つかもしれんやろ」と教わった。ボートレースで1レースに決まって無印ばかりに2~3万円突っ込む。ある時、最終レースの資金がなくなった可朝さんに「時計ありますよね…」と言い、ロレックスの腕時計を指さすと、それを質に入れた元手で十数万円の大穴を的中させた。その後ひんぱんに腕時計を買うようになり「30万円のを1回1万5000円ほどのローンで買う。質に入れたら、5~6万円でしょ。3万5000円のもうけや、と思ってはった」とあきれ顔で笑った。

 想定外の行動で周囲を驚かせた一面もあった。師匠の桂米朝さんの独演会中、背後をパンツ一丁で走ったり、宴会の席に遅れて「警察のもんやけどな、おまえら、やかましいねん」と窓から登場したり。空港の手荷物受け取り場で、ベルトコンベヤーに乗って1周したり、エピソードには事欠かない。電車に乗っていた時「あのハゲてるおっさんの頭をはれるか?」と本当に平手ではたき、周りを驚かせたこともあった。

 八方は「人と違うことをやるんが好き。『こんなやつ、おらん』という言葉が大好き。破天荒いうのは、なかったもんを作るいう意味で、まさに月亭可朝。はちゃめちゃはあるものを壊すで、これは横山やすし」と人柄をしのんだ。

 可朝さんにかわいがられた桂きん枝(67)も出席。「ばくちは2~3倍になってもおもろない。10円が1万円になるからおもろいんや、と(競馬などで)無印から無印ばっかり買ってはった」。マージャンのルールを聞かれて「同じのを3つ並べて、1つだけ2つの組み合わせ作る」と教えると「おもろいな。やろやろ」。ルールを知らないのに、と言うと「そんなんやってるうちに覚える」とやり始めてしまったという。

 故立川談志さんの弟子、立川談春(51)も東京から駆けつけた。「今を生きる落語家に本道、王道を教えてくださる、数少ない1人でした。勝負事が好きなのも、自分を日々律する生活より、いざという時に役に立つという面があったと思う。談志にないものを教えてくれた、貴重な方でした」。振り返る様が残念そうだった。

 この日は他に桂米団治、桂文珍、桂文福らも献花に訪れた。