今年で生誕60年になる特撮怪獣映画「ゴジラ」のハリウッド版「GODZILLA」の新作が16日(日本時間17日)、全米で一斉に公開された。米国の水爆実験に着想して生まれたゴジラだが、今回の作品は東日本大震災を念頭に置いたとみられる原発事故や地震の場面が描写されている。米各紙も取り上げ、高い関心を呼んでいる。全米3950館で公開され、週末3日間の興収は7000万ドル(約70億円)に届く見込みだ。

 ニューヨーク中心部にある映画館では、午前9時にゴジラの上映が始まった。コンピューターグラフィックス(CG)を駆使し、ハリウッドらしくゴジラと別の巨大怪獣との戦いも派手に描いた。

 日本やハワイ、米西海岸が主な舞台。一番乗りで映画を見た66歳男性は「これはこれで良いが、小さい時に見た第1作(を基にした米国版)は忘れられない。人間社会へのいろいろなメッセージが詰まっていた」と話した。

 第1作は1954年(昭29)に日本で公開された。広島、長崎への原爆投下の記憶も新しく、ビキニ環礁での水爆実験に伴い第五福竜丸が被ばくしたのは同じ年だ。核への恐怖が映画の底流にあった。今回の作品では、東日本大震災の津波被害や福島第1原発事故を題材にしたとみられるシーンが盛り込まれた。

 ギャレス・エドワーズ監督は英紙の取材に「この映画は、福島を直接的に表現したものではない。原発が東京に近い架空の町にあるという設定だが、福島で起きた問題をゴジラの作品で示したかった」と説明。人間がコントロールできない原発を扱う危険性を怪獣映画で示した。

 ニューヨーク・デーリー・ニューズ紙は「60年間、ゴジラ映画で何も変わらなかったものが1つある。社会が抱く恐怖をゴジラが体現している点だ」と指摘した。

 話題性が高く、公開前日の15日夜には全米3400館で先行上映され、930万ドル(約9億3000万円)を稼いだ。米メディアによると、夜間の先行上映に限れば歴代20位に入る興収だという。ニューヨーク・ブルックリン地区の映画館の支配人は「先行上映のチケットはほぼ完売していた。きょう(16日)も朝から多くの人が来ている」と話した。今後は63の国と地域で順次公開され、日本での公開日は7月25日。東日本大震災の惨状を振り返るきっかけになりそうだ。

 ◆ゴジラ

 映画会社「東宝」の特撮怪獣映画。1954年(昭29)公開の第1作は、体長50メートル、体重2万トンの怪獣「ゴジラ」が水爆実験で太古の眠りから目覚め、東京を襲うというストーリーで大ヒットした。名称はゴリラとクジラを合わせたもので、元は東宝社員のあだ名。シリーズは28本に上り、最後は04年の「ゴジラ

 FINAL

 WARS」。これとは別にハリウッド版のリメークがあり、今回は98年に続く2作目。<ゴジラの歩み>

 ▼1954年

 第五福竜丸事件を背景に製作された日本映画「ゴジラ」公開。空前のヒット作となり、シリーズ化へ

 ▼62年

 第3作「キングコング対ゴジラ」が大ヒット。米国など国外でも上映される

 ▼64年

 61年公開の映画「モスラ」の続編で、ゴジラ・シリーズの第4作「モスラ対ゴジラ」公開

 ▼71年

 静岡県・田子の浦港のヘドロ公害などを題材にした第11作「ゴジラ対ヘドラ」公開

 ▼75年

 第15作「メカゴジラの逆襲」公開。人気低迷に伴い、その後のシリーズ作品凍結

 ▼84年

 9年ぶりの続編として第16作「ゴジラ」公開

 ▼91年

 第18作「ゴジラVSキングギドラ」公開

 ▼2014年5月16日

 ゴジラのハリウッド版「GODZILLA」が米国で公開