「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンが1日、都内のホテルで発表された。国政関連で唯一選ばれたのは、1人の母親が匿名ブログで待機児童問題への強い不満を訴えた「保育園落ちた日本死ね」。国会で、安倍晋三首相を追及した民進党の山尾志桜里衆院議員(42)が表彰され、「年の締めにもう1度スポットライトが当たり、うれしい」。

 今年2月15日、ネットの匿名ブログに掲載され、強烈なインパクトを残した1人の母親の言葉が、今年を象徴する1語に選ばれた。子どもを保育園に入れられなかった母親が、過激なフレーズで国に不満をぶつけた。「このフレーズが先導するようにして大きな社会問題を現出させた」(選考委員会)と評価された。

 この言葉を、国会で初めて取り上げたのが山尾氏。筆者が匿名のため「本当か確かめようがない」と答弁を拒んだ首相を激しく追及した。首相答弁を機に2万7682人分の署名が集まり、3月9日に、政府に署名を提出。国会周辺では抗議集会も起きた。初期対応を誤った政府は、あらためて待機児童対策に向き合わざるを得なくなった。

 山尾氏も、仕事と1男の子育てを両立する。「私が表彰を受けていいのかためらったが、声を上げた名もないお母さんや、女性の代表で受け取りたい」とあいさつ。ブログの言葉を知った19歳の大学生に、「首相に質問してほしい」と要請されたのが、国会質問のきっかけだった。「質問の1週間後、お母さん方と2万7682人分の署名を政府に渡しに行った。1週間で起きた、奇跡のようなことだった」と、振り返った。

 ネット上の言葉が、政治も動かした。「こんなことになるとは思わなかったが、年の始まりと終わりを大きく象徴する言葉になった」。同賞の政治関連語で、野党の言葉だけが表彰される年も珍しい。安倍1強のあおりで沈みがちの民進党だが、「野党と市民が同じ方向を向いた時、思いもかけない力が出る。民進党の責任は大きい。幕引きにはできない」と述べた。

 待機児童対策は解決すべき問題が多く、与野党関係ない大きな政治課題だ。山尾氏は「次は、解決する時。今は新語・流行語でも、早く『死語』にできるよう頑張りたい」と、意欲をみせた。【中山知子】

 ◆「保育園落ちた日本死ね」 深刻な待機児童問題に対し、匿名でブログに書き込まれた言葉。安倍首相が匿名を理由に国会質疑で答弁を避け、批判浴びたことも。

 ◆新語・流行語大賞 1984年(昭59)制定。1年間に発生した言葉の中で、軽妙に世相を突いた表現で広く大衆をにぎわせたものを選ぶ。「現代用語の基礎知識」(自由国民社)の読者アンケートなども参考にする。毎年12月上旬にトップテンと年間大賞を発表。