前川氏は、文科省の天下りあっせん問題で今年1月に引責辞任。一方、文科省は「文書の存在を確認できなかった」とする調査結果を出し、見解が食い違う。前川氏は「もう少し調査してもよかったのでは。見つけるつもりがあればすぐに見つかる」とした上で、「私が発言すると迷惑をかけるが、あったものをなかったことにはできない。文科省は負いかねる責任を負わされた。気の毒だ」「現在の文科省は、官邸中枢の意向に逆らえない状況があるのではないか」と訴えた。

 「加計ありき」の認識が、「関係者の間に暗黙の理解としてあったのは事実だ」とも踏み込んだ。「疑問を感じながら仕事をしていた。まっとうな行政に戻せず、責任を感じている」と後悔の念も口にした。

 辞任の経緯に関し、菅氏は「地位に恋々としていた」と指摘したが、「私から大臣に申し入れた。じたばたということはない」と反論。国会の証人喚問にも「参ります」と述べた。弁護士も同席、質問によっては回答を控え、官邸の圧力を問われると「現時点では控えたい」と慎重だった。

 会見は1時間15分に及んだ。熱血漢で、物言う役人として知られた前川氏。かつて仕えた首相と、刺し違える覚悟だ。【中山知子】

 ◆前川喜平(まえかわ・きへい)1955年(昭30)1月13日、奈良県出身。東大法学部卒業後、79年に文部省入省。早くから次官候補と評されたエリートで初等中等教育の専門家。16年6月に事務次官就任も、組織的天下り問題で半年余りで引責辞任した。

 ◆問題の経緯 加計学園(岡山市)は、第2次安倍政権の国家戦略特区制度を活用し、愛媛県今治市に岡山理科大の獣医学部新設を計画。07年以降15回、構造改革特区への申請は認められなかったが、今回は認められた。獣医学部新設は52年ぶり。応募したのは同学園だけ。今治市は約36億円相当の建設予定地を無償譲渡。施設設備費約96億円の助成も決めた。設置認可の答申は8月で、認められれば来春に開学する。理事長の加計孝太郎氏と安倍首相は30年来の親友で、ゴルフや食事を重ねている。