元TBSワシントン支局長で安倍政権について書いた「総理」などの著書があるフリージャーナリスト山口敬之氏(51)に酒を飲まされレイプされたとして、警察に準強姦(ごうかん)容疑で被害届を出していた詩織さん(28)が29日、東京地検の不起訴処分を不服として検察審査会に審査を申し立てた。都内で会見し、明かした。法律や捜査システムの改善につなげたいとの強い思いから、同様の事件では異例の素顔、実名公表での会見となった。

 詩織さんは、山口氏の逮捕状が逮捕直前で取り下げられたと主張し、「私の知り得ない力があったのだと思う」と述べた。

 「事件」があったのは15年4月。13年に米ニューヨークで知り合いその後、ジャーナリストを志していた詩織さんが就職相談のため連絡を取り合っていた中で、当時TBS勤務の山口氏から酒席に誘われた。東京・恵比寿の串焼き店、すし店の2軒で酒量はビール・コップ2杯、ワイン・グラス1杯、日本酒2合を同氏と分け合ったという。

 2軒目に入り約1時間後、めまいがしてトイレに立ち、記憶が途絶えた。目が覚めたのは、翌午前5時ごろ。ホテルのベッドで裸にされており、上には山口氏がまたがっている状態だったという。薬を入れられた、と主張する詩織さんは「お酒で記憶がなくなったことはない。(酒に)強いと周りから言われる」と話した。

 詩織さんは捜査過程について疑問を呈した。被害届を受理した高輪署の担当警察官が同年6月8日、逮捕状を取って成田空港で帰国する山口氏を待っていたが「警視庁幹部の指示で逮捕を取りやめた」と説明を受けた、と主張した。

 その後、捜査が警視庁捜査1課に移ったが、山口氏の弁護人から申し入れがあったこともあり捜査員から示談を勧められたという。「警視庁の方が紹介する弁護士のところでも示談を勧められた」。山口氏は書類送検され、東京地検は昨年7月、嫌疑不十分で不起訴としている。

 詩織さんは、家族に反対されたとして姓だけは伏せたと説明。会見では一時、声を詰まらせる場面もあったが、大部分はカメラを直視し「ジャーナリストとして事件を追いかけた。沈黙し、法律や捜査システムを変えなければ、私たちは皆、この犯罪を許しているのと同じでは」と訴えた。

 山口氏は安倍政権の内幕をつづった著作があるなど安倍晋三首相に近いジャーナリストとされ、この問題については週刊新潮が5月18日号で報道している。山口氏はこの日夜、自身のフェイスブックで「私は法に触れることは一切していません」「女性が会見で主張した論点を含め、1年4カ月にわたる精密な調査が行われ、結果として不起訴という結論が出た。申し立てが行われたのであれば、今まで通り誠心誠意対応します」とコメント。検察審査会の判断が注目される。