安倍晋三首相(63=自民党総裁)は16日、今衆院選で初めて大阪に入り、選挙戦後半を迎えた。午後には「日本維新の会」代表の松井一郎大阪府知事のおひざ元、近鉄・八尾駅前で、自民党の長尾敬氏(54)の応援演説を行った。

 前々日の神戸に続き、この日も阪神タイガースのクライマックス・シリーズ(ファースト・ステージ)をつかみにしたが、八尾では若干、不発気味。安倍首相は「皆さん、今夜は阪神タイガース、天王山でございます。ちょっと雨が心配ではございますが、まさに長尾敬にとっても、天王山です」。大阪で強さを発揮している維新、松井氏の地元を「たいへんに厳しい選挙区」と言い、猛虎ネタで応援をお願いした。

 さらに「一昨日、私は神戸に行った。そしたら福留が2ランホームランを打った。皆さん、阪神が勝ったんですよ」と続け、14日の神戸にならって「この大阪にいる間は阪神を応援しようと思っている。やっぱり阪神が勝てば大阪が元気になる。そしてこの長尾敬が勝てば、日本がもっと元気になると思います」と続けた。

 だが、しかし…。雨の中、傘を手に駅前ロータリーを埋め尽くした聴衆からは、思ったほどの拍手は起こらず。一部から「阪神(の話題)はええ(いらない)」との声も飛んだ。

 14日の神戸は、演説場所が東灘区で、本拠地甲子園球場がある西宮市に隣接する芦屋市に最も近い地域。阪神ファンも多く、聴衆はわき上がったが、八尾市は近鉄沿線地域で、かつては近鉄ファンが多い場所で知られただけに、肩すかし気味の反応だった。

 それでも、松井氏のおひざ元で、心配されたヤジもそう大きな声は届かず、安倍首相は、安全保障問題へと演題を進めた。

 「3日前、ある方が(演説先で)ここは、めぐみさんが通っていた地域なんですよね。なんとか、両親が元気なうちに、めぐみさんを連れて帰りたいと言っていた。その思いを実現させたいんです」

 安倍首相は12日に新潟入りしており、同所での話を紹介し、訴えた。

 大阪は、松井氏が前大阪市長の橋下徹氏と立ち上げた「大阪維新の会」「日本維新の会」が強く、全国的に見ても異例の地域性を持つ。長尾氏が争う大阪14区(八尾市、柏原市、羽曳野市、藤井寺)には、維新の谷畑孝氏(70)らがおり、長尾氏は12年、14年にも谷畑氏に小選挙区で敗れている。

 この日、長尾氏は「尖閣諸島にも行った。けっこう、むちゃをしているんです。日本の安全保障は、長い歴史がある自民だから守れるんです」と、安全保障問題への取り組みをアピール。安倍首相も「地域のために汗を流して、日本の安全保障、その分野においても、長尾さんはリードしている。日本の安全保障において必要な人材であります」と、長尾氏への支援を呼びかけていた。