千葉県柏市のJR常磐線柏駅に停車した電車内で19日、女性(25)が女児を出産した。JR東日本東京支社や柏市消防局によると午後1時36分ごろ、非常ボタンが押され、駅員が駆けつけると女性が出産した後だった。

 119番通報は同40分過ぎに入ったが、複数人から「車内で分娩(ぶんべん)した人がいる」と通報があった。同2時11分、病院に救急搬送され、母子ともに健康な状態だという。

 電車は品川発土浦行きの15両編成で約400人が乗車していた。出産した女性と同じ車両に乗り合わせていた男子専門学生が取材に応じ、緊迫した様子を語った。

 「『おんぎゃー、おんぎゃー』という赤ちゃんの泣き声が聞こえた。だんだん元気がなくなり、10~20秒後には聞こえなくなったので心配だった」。泣き声が聞こえたのは停車直前だったという。

 直後に乗客の女性4、5人が出産した女性を取り囲みサポートしていた。停車後は駅員らが大量の白いタオルを車内に運び、ブルーシートで現場を覆った。車内と駅構内では「どなたかお医者様はいませんか」との放送が流れた。

 しばらくすると救急隊員が現場に到着。同消防局は、駅には階段が多く、上り下りなどで搬送が難しくなることを想定。隊員を多く派遣するため、救急車と同時にポンプ車も同行した。

 男子専門学生には、出産した女性の声などは聞こえなかった。「まさか電車内で出産をしていたとは思わなかった。陣痛が来て、赤ちゃんの頭だけが出ていたのかと思っていた」と振り返った。無事出産したと後にニュースで知り、「車内ではあぜんとしたし、不安だったが、無事に生まれたと聞いて良かった」と安堵(あんど)した。

 電車は28分後に運転を再開。常磐線は一時運転を見合わせた関係で約2100人の乗客に影響が出た。同消防局は「この状況下での出産はまず聞いた事がない」と話し、JR東日本東京支社の担当者も「記憶している中で、このような事例は聞いた事がない」と語った。【三須一紀】