森友学園をめぐる財務省の文書改ざん問題で、連日追及を受けている同省の太田充理財局長が19日、参院予算委員会集中審議で「重大証言」をした。改ざん前の文書に、安倍晋三首相の昭恵夫人の名前が書かれていた背景を「基本的に総理夫人だからだと思う」と述べた。文書作成者が、総理夫人の影響力を認識していたことを認めた形。委員会室は「おおっ」とざわついたが、首相は夫人の関与を否定し続けた。

 官僚答弁が多い太田理財局長が、踏み込んだ答弁で委員会室をざわつかせた。

 共産党の小池晃氏が、改ざん前の決裁文書に、政治家とともになぜ昭恵夫人の名前があったのか、疑問をぶつけた。首相は、自身や夫人の関与を一貫して否定しているが、太田氏は「基本的に総理夫人だからではないかと思う」と明言。文書を作成した近畿財務局の職員が総理夫人の影響力を認識していたとの見方を、初めて示した。太田氏は16日も、改ざんの背景に関し「政府全体の答弁を気にしていた」と首相答弁の影響を示唆するなど、踏み込んだ発言を続けている。

 小池氏は「重大な発言だ。総理夫人だから、関与しているから、書かれたんです」と感情を高ぶらせ、「夫人に関する記述は(交渉の)ターニングポイントで出てくる。太田氏が言うとおり、総理夫人だからだ」と指摘。夫人が鍵を握る人物との認識を強調した。

 首相は「まったく違う。私の妻でなければ(文書に)載りませんよ」と反論。「(文書にある夫人の言葉は)籠池(泰典)氏が述べたもの。籠池氏が妻の名前を出し、籠池氏がそう言ったという記述。籠池氏が言ったから(作成者は夫人の名前を)出したのだろう」と、籠池氏の名前を4度も出し、夫人の関与を否定。「名前が出ていることと、関与しているかは別」「私の妻が出てこない経緯でも、ほぼすべて削除されている」と無関係を主張した。

 ただ、現状で首相の答弁は、夫人の「代弁者」にすぎず、小池氏に「『夫婦の家庭内の会話』で、国会を乗り切ろうなんてあり得ない」と皮肉られた。第三者が立ち入れない夫婦の会話は「証拠」になるはずもない。野党は夫人の証人喚問は不可欠と、訴えた。

 首相は昨年2月17日の「関与があれば総理も議員も辞める」発言が、財務省を改ざんに走らせたとの見方を否定。「決裁文書は存在すら知らず、指示のしようがない」とも主張。議論は深まらなかった。【中山知子】