将棋の史上最年少プロ、藤井聡太七段(15)が初タイトルに大きく近づいた。22日、東京・千駄ケ谷「将棋会館」で指された第66期王座戦挑戦者決定トーナメント(T)準々決勝で、深浦康市九段(46)を撃破。タイトル初挑戦まで、あと2勝とした。A級棋士との激戦を制した藤井は、「序盤から1手1手、難しい将棋だった。最後になって、やっと勝ちを意識しました」と振り返った。

 深浦とは昨年12月、第3期叡王戦の挑戦者決定Tで初対局し、優勢を築きながら深浦の粘りに後半失速、逆転負けしていた。投了直前にはヒザをたたいたり、脇息(きょうそく)にもたれかかるなど、珍しく悔しさをあらわにした。だがその敗戦をバネに、今年に入るとC級2組からC級1組への昇級、朝日杯で棋戦初優勝とパワーアップしてきた。段位も当時の四段から、半年で七段に。成長を見せつけ、リベンジした。

 8大タイトル戦のうち、藤井が年内に挑戦者となる可能性があるのは王座戦、棋王戦、竜王戦の3棋戦だが、ベスト4まで進出したのは今回が初めて。タイトル挑戦の最年少記録は89年、屋敷伸之九段が達成した17歳10カ月で、このまま勝ち進めばまた1つ、天才少年が将棋界の記録を大きく塗り替える。

 中村太地王座(30)への挑戦権をかけた16人によるトーナメント。準決勝では昨年棋聖戦に挑戦した若手のホープ、斎藤慎太郎七段(25)と対戦する。4強のうち、藤井以外は全員がタイトル戦経験者だ。険しい道のりは続くが、藤井は「意識しても仕方ない。ここまで来られたのだから、全力を尽くしたい」。自然体で、頂点を目指す。【赤塚辰浩】