東京湾のマダコの勢いが止まらない。この夏、東京湾では、雨が少なかったこともあり、真水を苦手とするマダコが大量発生したようだ。ただ、このところの雨の連続でも鶴見「新明丸」ではマダコ、依然として好釣。まだまだ続きそうな様相だ。そこで、関東地区では手釣りが主流だが、関西地区で流行しているエギを使ったサオ釣りで挑戦してみた。なかなか面白い。

 今夏、東京湾のマダコは、異常だった。海底に張り付くように生活していることもあって、大量発生すると「湧く」と表現する。まさに今夏は湧きに湧いた。

 東京湾では、伝統的に返しのない2本のハリ状のものとオモリをセットにして、カニを巻き付けた「テンヤ仕掛け」が一般的だ。しかも、直接糸を手で持つ釣法だ。テンヤ仕掛けを着底させて、手で誘う。仕掛けは絶対に浮かさない。ときおり動きを止めて、アクションに変化をつけて、マダコをその気にさせる。

 マダコは獲物を認識すると、覆いかぶさり、そして8本の足でジワジワと締め付けていく。この覆いかぶさる行為を「乗る」という。手で糸を動かしていると急に重みを感じる。ハリには返しがないので、そのまま、糸をたぐっていく。アタリはない。ただ重たいだけ。重みが変わらなければ、マダコが乗っている証明となる。着底した感触さえ分かれば、あとは重みを感じるだけなので、ビギナーでもマダコは捕獲できちゃいますよ。

 そこで、現在、関西地区で大人気のサオでの釣法を試した。イカなどでよく使われる「エギ」のタコバージョンだ。見た目にはエビを模したイカのエギのようだが、尾の部分が剣山みたいなカンナバリではなく、アサリを掘る熊手に似たハリになっている。ミツマタサルカンとダブルサルカンを使って、オモリとエギをつなげる。

 インターネットや釣具店などでは、オモリは50号を使用しているものが多い。これは、いち早く底を取って、オモリを中心点としてエギを浮遊させる誘い方だ。さて、実釣ではどうだろうか?

 実釣は21日だった。前日、首都圏には強い雨。各地に猛威をふるった台風9号も上陸直前で、午前だけならベタナギだった。ただ、海には濁りが入ってチョコレートみたいな海色。マダコ、乗ってくれるのか?

 タコボウズ記者も、50号のオモリとエギを装着。「こんなオモチャで大丈夫か」と半信半疑のまま探る。さすがに着底が早い。ズドン、と音がしそうだ。サオは長さ2・4メートルの先調子で、大きなマダコが乗っても抜き上げられる80号負荷の頑丈なタイプで臨んだ。

 先調子なので、誘いを掛けやすいが、50号オモリがやっかいだ。マダコが乗ったときに判別できない不安に襲われた。道具箱をほじくると、ちょい投げで使った3号、5号、10号の軽いオモリがウジャウジャ出てきた。とりあえず10号だけ。落とし込みのときにエギの浮遊感は確認できるが、着底までが遅い。5号と3号を一気に足して計18号とした。フワリと落ちて、底も確実に捉えた。これはいい。

 動きはいい。エギも緑や黄色などを使ったが反応がない。白ベースのエギに変えた。とたんにグン、何かがエギに乗っかった。オモリの軽さがすぐに手に伝わる。手釣りよりも明確に「乗った」ことが分かるような気がした。しかも、手で糸をたぐりこむのではなく、リールを使うため、糸フケが出ずにマダコに逃げるスキを与えない。800グラム前後をキャッチした。

 その後も1キロオーバーを含んでなんと計4匹。濁りの入った海では白系が効果を発揮する。それと、取り込みの際、サオの長さがあるため、船にへばりつかれる心配もない。手釣りでは、取り込みのときに腕を海側に伸ばして船べりに付着しないように注意しなければならない。サオを使ったタコエギ、これは面白い。まだ研究余地はありそうだが、今後、流行しそうな予感を抱いた。【寺沢卓】

 ▼宿 鶴見「新明丸」【電話】090・3519・1111。マダコ乗合船の出船は午前7時30分。「遅くとも午前7時までにはおいでください」とのこと。エサのカニ付きで9000円。糸巻きレンタル無料。要予約。