元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 歯が抜けました。入れ歯でしょうか、ブリッジでしょうか。

 A 歯を抜いた、歯が抜けた…放っておくとどういう現象が起きるかというと、左右の歯がその隙間を埋めるように倒れてきます。上下でも、仮に下の歯がなくなると、上の歯が下がってきますし、上の歯がなくなれば、下の歯が飛び出してきます。

 若いうちであれば歯を支える歯周組織がしっかりしているので、まだ歯をがっちりつかんでいますが、年を取ると支える力が弱くなるため、さらに動きやすくなります。当然かみ合わせのバランスが悪くなります。

 そこで何かで補うのですが、一番シンプルなのは入れ歯です。保険が利きますし、周りの歯を大きく削ることもありません。残っている歯の本数や顎の形態、設計などの諸条件にも左右されますが、入れ歯は天然の歯に比べると、かむ力は5分の1から10分の1に落ちると言われています。プラスチックの塊が入るわけですから多少の違和感もあります。衛生的な観点から考えても、ばい菌が繁殖しやすい環境です。お年寄りに多い誤嚥(ごえん)性肺炎の原因が入れ歯にあることも多いので、就寝時は必ず外して義歯洗浄剤に漬けるのが基本です。歯肉を圧迫するため、入れた部分は顎の骨が痩せやすいというデータもあります。長く使っていくうちに歯肉との間に隙間ができたり、プラスチックが劣化して割れたり、バネが変形したりと、定期的に作り直す必要が必ず出てきます。これが面倒でなければ入れ歯でも十分ですし、保険外対応の素材ではもう少し快適に長期間使える工夫ができる場合もあります。

 ブリッジは取り外す必要がないため入れ歯に比べると快適とおっしゃる方が多いのですが、ご存じの通り両隣の歯を削ります。金属であれば保険が利きますが、例えば1歯欠損であれば3本の歯を2本で支えることになるので、物理的にどうしても両隣の歯に負担をかけてしまいます。ご自身できちんとケアできる方はともかく、歯磨きが上手でない方の場合は新たな歯周病や2次う蝕を招く恐れがあり、たった1本の歯を補うために3本を失ってしまうケースもあります。リスクを減らしたいのであれば、耐久性が良く汚れが付きにくい種類の金属やセラミック・ジルコニア等を使用した自費対応のブリッジを検討してみるのもひとつです。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。