バイアスロン男子7・5キロ立位で、上肢障害の佐藤圭一(37=エイベックス)が5位入賞した。

 1周2・5キロのコースを3周する間に、2回(全10発)の射撃を行う。佐藤は1回目を満射、2回目は1発外した。フィニッシュ直後の実測タイムでは4位だったが、クラスごとの係数を乗じた計算タイムにより5位となった。「短距離なのでスタートから飛ばしていく作戦でした。2回目の射撃の時、強い日差しが陰るのを待つのために時間がかかってしまったけれど、射撃は安定していた。自分が狙った通りの展開で良いシーズンの締めくくりになりました」と満足げに語った。

 生まれた時から左腕の手首から先がない。19歳の時、長野パラリンピックを観戦しに長野まで出かけた。障害者である自分に、何ができるかを模索する旅だった。そこで、自分と同じような障害の選手が、力強くクロスカントリーコースを滑る姿を目にして、全く経験のないクロスカントリースキーを始める決意を固めたという。10年バンクーバー大会出場を目指して、単身カナダに渡りスキー修行へ。帰国後、(当時の)日本代表の荒井秀樹監督を訪ねて思いを伝え、強化指定選手の仲間入りを果たした。目標通り、バンクーバー大会に初出場し、14年ソチ大会も連続出場した。

 夏場のトレーニングとしてトライアスロンを始め、トライアスロンが正式種目となったリオデジャネイロパラリンピックに出場を果たした。「初めて夏のパラリンピックに出場して、すごいアスリートにたくさん出会えた。新しいライバルたちを見て、自分ももっと頑張らなくてはいけないと感じました」。

 22日のレースで、女子座位で優勝したアンドレア・エスコー(ドイツ)のように、自転車とノルディックと夏冬両方のパラリンピックでメダルを獲得する選手が存在する。そういう選手の姿も、大きな刺激を与えてくれるという。

 自転車に乗るときには右手だけでハンドルを握りしめる。左腕で支えられない分、ペダルを踏み続けるには強い体幹や脚力が必要とトレーニングを課してきた。「それが、クロスカントリースキーのスケーティング技術を押し上げてきた」と、日本代表の長浜一年(かずとし)監督も評価する。約1年前から少しずつ苦手意識のあったスケーティング技術で「やっと滑れるようになってきた」と実感を得られるようになった。

 1年後は3度目となる平昌パラリンピックに向かう。「ノルディックスキーは自分との戦い。力を出し切って、結果的にメダルにつながれば」と意欲を見せた。

 バイアスロン男子は他に星沢克(16=立命館慶祥高)が10位、視覚障害の高村和人(34=盛岡視覚支援学校)が7位。女子6キロ立位は阿部友里香(21=日立ソリューションズJSC)が6位、出来島桃子(42=新発田市役所)が7位、座位で新田のんの(20=札幌デザイナー学院)が4位だった。【宮崎恵理】