昨年のリオデジャネイロ・パラリンピック金メダルのオーストラリア、同銀メダルの米国、そして同銅メダルの日本の上位3カ国による3回戦総当たりで、日本は開幕戦で米国に44-51で敗れたが、ミスを修正して臨んだ第2戦のオーストラリア戦は60-41の大差で勝利を収めた。

 リオ大会後に米国とカナダで代表監督を歴任した米国人のケビン・オアー監督が就任。2020年東京パラリンピックを目指して、新しい日本代表チーム構築に取り組んでいる。その第1章となる今大会で、早くも新人選手らの活躍が目立った。

 初戦の米国戦では女子の倉橋香衣(26=商船三井)が先発に抜てきされた。車いすラグビーはもともと男女混合の団体競技。選手は障害の状態と程度に応じて0・5から3・5まで持ち点があり、コートに入る4人の合計が8・0点以内でなければならないが、女子が入ると合計点に0・5点が加算される。倉橋の持ち点は障害が最も重い0・5で、先発メンバーの持ち点構成は、3・0、3・0、2・0、0・5(倉橋)だった。

 「初めて日本代表としてアメリカと対戦したのは、2週間前に行われたアメリカの大会です。ぶつかった時にものすごく吹っ飛ばされた。もう、笑っちゃうくらい」。今大会、米国戦での先発出場に倉橋は「どれだけトランジション(攻守の切り替え)を早くして、走りきれるか」と、心してコートに入った。

 障害が重い倉橋の役割はディフェンスである。守備専用の競技用車いすの前部にはバンパーと呼ばれるパーツがあり、これを使って相手選手の動きを止める。倉橋は米国戦でも、途中出場したオーストラリア戦でも、相手選手を抑え込んでパスのコースを限定させ、突進する選手の前で構えて最短ルートを遮断するなど、守備でチームに貢献した。

 倉橋は幼い頃から体操選手として活躍したが、大学時代にトランポリンの転落事故で頸髄(けいずい)を損傷した。首から下の感覚がなく力も入らない。それでも車いすラグビーという男子でもハードな競技を選んだ理由について「ぶつかってもいい、吹っ飛ばされても面白いから」と笑う。

 オアー監督は「日本代表になってから、このアメリカ戦で倉橋は最も長くコートでプレーした。戦術的にはまだまだ課題はあるが、機能するということを確認できた」と評価した。

 同監督は倉橋とともにリオ大会で控えに甘んじた選手や同大会後に代表メンバーに選出された選手らを積極的に起用。「新しい選手が入ることで当然リスクはある。しかし、それは今大会だけの結果を求めるのではなく、2020東京パラリンピックという長期的な目標を見据えてのこと。エラーは覚悟の上でさまざまなチャレンジをして選手の成長を図る。ホームとしてのプレッシャーがかかる中でどう戦うかを学ぶことも大事だ。ジャパンパラという大会の意義はそこにある」と語る。

 世界のトップ3が集まる今大会は、新たな選手たちの可能性を試し経験を積ませる貴重な機会ということだろう。

 大会は最終日の28日まで4日間続く。1勝1敗。初日の経験を糧に、明日以降に臨む。【宮崎恵理】