あるぞ、北京で3連覇-。フィギュアスケート男子の羽生結弦(23=ANA)が、66年ぶりの五輪連覇を達成した。メダリスト会見では22年北京五輪(ペキンオリンピック)について質問されて態度を保留した。一方で「3連覇は史上初かな」。幼少期の恩師、都築章一郎コーチ(80)にはアクセルを含めた4回転ジャンプ全制覇を約束している。史上初の4回転半ジャンプに挑戦する姿勢が、北京五輪でのV3につながる可能性がある。

 羽生は、27歳で迎える北京五輪について聞かれて、視線を宙に向けた。少し考えてから「今は特に次の五輪は考えてないですし、足首がよくならないと。完璧に治すことを考えています」と慎重に口にした。その上で、こう言葉を続けた。

 「(男子の五輪)3連覇は史上初になるのかな」

 羽生は「史上初」にこだわりを持っている。歴代世界最高得点を保持して、4回転ループも史上初の成功だった。そんな23歳が口にした「3連覇は史上初」は実際には達成者はいるが、北京への意欲をかきたてる理由になる。

 出場すれば、3度目五輪となる北京。銀メダルの宇野から「(羽生が注目されて)久しぶりにプレッシャーを浴びなくて楽だった。もうしばらく楽をさせてほしいと思います」とジョーク交じりでお願いされた。「まじかー」と天を仰ぐ、その顔は笑っていた。

 北京行きは保留したが、まだやり残しはある。五輪を連覇したこの日も「小さいころから描いた夢の、やっと中間点にきている」と口にした。それは幼少期に恩師と交わした約束だ。

 小学校低学年のころ、都築コーチと練習前に近所のトラックを約1時間、並んで走った。走ることは嫌いだった。息が切れ、視界がゆがむ中で、呪文のように同じ言葉を聞いた。「4回転全種類を跳ぶんだよ」。

 五輪シーズン前の昨夏、羽生は同コーチに言った。

 「先生、あと3年待ってください」

 「うん、わかったよ」

 20年夏までに4回転全種類制覇の約束をかなえる。それは人類が誰も実現していない4回転半ジャンプも含まれる。さらに都築コーチの「これからは5回転の時代だよ」という言葉に「はい」と力強く返した。

 羽生の4回転ジャンプは、フリップ、アクセルを残している。2種類に成功するまで2シーズンかかる計算だ。計画通りにクリアすれば、その次は20-21年でプレ五輪シーズンになる。

 3連覇について「甘くないのは知っている。(ソチ五輪後の)4年で周囲のレベルが上がった。もうちょっと滑ると思うけど。皆と滑りながらいろいろ考えていけたら」と言った。恩師と約束した4回転制覇の先にV3がかかる北京五輪が待っている。【益田一弘】