平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)フィギュアスケートで2大会連続金メダルの偉業を達成した羽生結弦(23=ANA)の故郷宮城県仙台市も、華麗で力強い演技に湧いた。JR仙台駅内に用意された大画面前では、約1万8000人が大歓声。大きな拍手や笑顔に加え、けがを乗り越えて結果を出した姿に涙を流す女性も相次いだ。仙台市体育館(カメイアリーナ仙台)、NHK仙台放送局などでもパブリックビューイングが行われ、快挙の喜びを共有した。

 羽生が氷上に立つと、仙台駅に激励の拍手が地響きのように鳴り響いた。フリー曲「SEIMEI」が流れると一気に静寂へ。両手をギュッと握りしめて成功を祈る姿。最初のジャンプ4回転ループが決まると、笑顔と大きな拍手に変わった。悲鳴のような歓喜の声も加わり、大興奮に包まれた。

 演技最後に羽生が右拳を突き上げた笑顔が大画面に映り、興奮は最高潮に達した。宇野の演技が終わって金メダル確定。06年トリノ五輪金メダル荒川静香氏(仙台市出身)の姿に魅了されて競技に引き込まれた坂本民子さん(71)は「フィギュア発祥の地の仙台から、再び金メダル。世界に誇れる」。音楽講師の経験から「羽生くんのスケートは技術ではなく芸術。音楽の解釈とかではなく、彼自身が楽器となって奏でているようだから心に響く」と形容した。

 東北高OBの高山正彦さん(80)が「ガッツがすごい」。遠藤美聖さん(20)も「一緒に滑っているような気持ちになってドキドキできることが魅力。ケガもあって心配だったけれど、本当によかった」と笑顔。Jリーグのベガルタ仙台サポーターでもある高橋育子さん(51)は「ベガルタにも優勝してほしい。羽生くんのパレードをまた見たいし、ユアスタにも来てほしい」と願った。

 イベントで高校時代の同級生と偶然に遭遇し、同窓会気分で応援したグループ。デート中に「歴史的な瞬間に立ち会えて、温かい気持ちになりました」と話すカップル。老若男女が、多種多様な思いで見守った金メダル。東北の地に勇気や元気の活力となる“お礼”が、羽生から届いた。【鎌田直秀】