「僕、目指したらそうなるんです…あ、訂正します。目指したら、そうします!」と話してくれたのは、2月に若松で行われた九州地区戦で、G1初優勝を飾った仲谷颯仁(はやと)選手(23=福岡)。115期の九州地区のトップルーキーです。この言葉を聞いてうれしくって、思わず「うちの家訓も“欲しいものは自分で取りに行け! 本気でつかみ取れ!”なんですよ」というと、うちのだんな様と私を交互に見て「そうですよねぇ」とにっこり笑ってくれました。

九州地区選で優勝して、水神祭で水面に投げ込まれる仲谷颯仁選手(若松ボート提供)
九州地区選で優勝して、水神祭で水面に投げ込まれる仲谷颯仁選手(若松ボート提供)
水面に投げ込まれた仲谷颯仁選手。寒そうだけど、うれしそうです(若松ボート提供)
水面に投げ込まれた仲谷颯仁選手。寒そうだけど、うれしそうです(若松ボート提供)

 その地区戦を「前検からエンジンも良かったし、いけるかな?! と思って、初日がピンピン(1着、1着)だったんで、優勝をちょっと意識してみようと思ったんです。そしたら得点トップになって…『運が僕に向いてる!』と思いました」と、ちょっと恐縮しながら「優勝戦もインから行けばエンジンも出てたしスタートも見えてたんで、あとは石川さんのピット離れだけ心配してました」と振り返ってくれました。

2月に行われた若松ボートの九州地区選で優勝して、表彰式でガッツポーズの仲谷颯仁選手
2月に行われた若松ボートの九州地区選で優勝して、表彰式でガッツポーズの仲谷颯仁選手

 もともと全く知らなかったボートレースを初めて見たのは高校3年生の頃。その水しぶきやエンジン音にかっこいい! と思ったそうですが、お母様は大反対。それでも、やまと学校の合格を目指して必死でトレーニングしている姿などを見て、今では大応援団になってくれていると、うれしそうに話してくれました。今回のG1の優勝を電話で報告した時も「おめでとう。周りの人に感謝しなさい」と言ってもらえたとのことで、「フレッシュルーキー、トップルーキーと選んでもらって、地元にも恩返しできたし、ちょっとは親孝行、師匠孝行できたかな」と優しい表情の仲谷選手でした。

 その思いを預かって、後日、師匠の川上剛選手に伝えると「去年、最大の目標だった“新人賞”を取れなくて、颯仁も僕も悔しくて…。今年の初めに“この1年、SGの権利取りをしよう!”と目標を掲げて、今からいけるSGを順番に挙げたんです。それで『クラシックに出たい。なら、地区戦を取るしかない!』ってなって本当に優勝したんで、僕もすごくうれしかったです」と、まるで自分のことのように熱い思いを語ってくれました。

九州地区選で優勝した仲谷颯仁選手(右)を、ピットで出迎えた師匠の川上剛。心なしかその目はうるんでいるような…(若松ボート提供)
九州地区選で優勝した仲谷颯仁選手(右)を、ピットで出迎えた師匠の川上剛。心なしかその目はうるんでいるような…(若松ボート提供)

 もちろん、ここまでの道のりは全てが順調だったわけではなく、デビュー戦フライングという大きな試練からでした。「でも、それが良かったんです。僕、学校で一番勝率が良かったし、デビューしてすぐいけるかも! と思っていたのが、早いうちに見つめ直せたんで」。

 その次の期に2本目のフライングをしてしまった時や、途中で道をそれそうになった時など、節目節目で川上選手からずいぶん怒られたこともあったようですが、怒ってくれる人の愛情をしっかりと感じて応えていくからこそ、師匠も「颯仁は素直なんですよ。あそこまで成績伸びたのは、それも大きいと思います」という言葉をくれるんでしょうね。

 そんな仲谷選手の現時点での自己評価を尋ねると、10点満点中5点。「まだまだ足りないことばかりです。青色のカッパ(SGジャンバー)を着ている人たちに比べたら全てにおいて劣ってると思う」とかなり厳しめですが、最後にしっかりと前を見て、少し顔を上げて「常にSGに出て活躍するためにも、今年はとにかく年末の舞台に立てるように」といい表情を見せてくれました。

 
 

 「周りにも言われるし、お互いに意識してると思う」という114期の羽野直也選手(22=福岡)について、「どんな存在ですか?」と尋ねると、「素晴らしいです! 人柄も含めて!! 僕は一生ああはなれない」と苦笑い(?)しながら「でも、ライバルではないんです。一緒に切磋琢磨(せっさたくま)して高めあえるいい関係だと思っています」と話してくれました。

九州地区選最終日、若松のピットでの仲谷颯仁選手(右)と羽野直也選手のツーショット。やっぱり、さまになりますね(若松ボート提供)
九州地区選最終日、若松のピットでの仲谷颯仁選手(右)と羽野直也選手のツーショット。やっぱり、さまになりますね(若松ボート提供)