前回の川上選手のコラムの時に取材させていただいた原田富士男選手(49=福岡)のご子息が、5月7日からの若松ボートでデビューを迎えました。初日の第1レースでの登場となった原田才一郎選手(21=福岡)。そのデビュー戦はなんと、初出走・初1着! 今回は、親子共演でお話を伺ってきましたよ。

インタビューに答えてくださった原田富士男選手(右)と才一郎選手
インタビューに答えてくださった原田富士男選手(右)と才一郎選手

 まずは才一郎選手ご本人にデビュー戦のことを伺うと「その3日くらい前に心臓がバクバクしたんですけど、その時自分の中で、今いい精神状態だなぁと思えたんです。剣道やってた時に、試合でいい結果が出る時と同じ感覚だったんで緊張はしなかったですね」とのこと。初出走直前も、「先輩たちがめっちゃ集中してて、それ見て逆に僕、落ち着いたんですよね」と話した時には、お父様から「ベテランか」と突っ込みが入ったほど、新人らしからぬ精神力で臨めたようでした。でも、初出走初1着という結果については「ゴールしてからびっくりしました」と初々しい笑顔。

中学時代、原田才一郎君は剣道に打ち込んでいました
中学時代、原田才一郎君は剣道に打ち込んでいました

 一方で、その日が徳山ボートの前検日だったお父様の富士男選手は、前検終了後にもうレース終わったかなぁ? と管理室に向かいました。「すみませーん。若松の1レースの結果分かります?」と尋ねると「分かりますよ。えーっと6-4ですね」という返事がきて、「えっ?! そんなはずはない。初日の1レースですよ」と半信半疑のまま検査室に向かって成績表を出してもらったところ「あ! おめでとうございます。ぼっちゃん1着です」とお祝いを言われたと目を細めて振り返って下さいました。

幼稚園で親子競走でハッスルする原田富士男選手と才一郎君
幼稚園で親子競走でハッスルする原田富士男選手と才一郎君

 「ちっちゃい時からずっと生活の中で父が走ってるのを見てたんで、自分もこの道に行くなー。そうなるなぁと思ってました」と、ごくごく自然にボートレーサーを目指した才一郎さん。高校の先生からは進学の提案もあったそうですが、迷いは全くなかったと言います。それでも、すんなり道が開けたわけではなく、養成所の試験を受けながら合格するまでの約2年の歳月を、勉強にトレーニングに、アルバイトは3つも掛け持ちして自分を高めていきました。「勉強とトレーニングといってもずっとじゃないし、ぐうたらした生活よりはしっかりと時間を決めて何かをしていた方が充実して、安心感もある。何かやってないと気が済まないんですよ」とその理由を話す才一郎さん。「意外や意外、真面目でねぇ」とお父様は言いますが、それは「レースに行ってなくても常にペラ小屋で何かしてた」という父の姿を子供のころから見てきたから。その真面目さは、おふたりの同じまっすぐな目を見た時にすぐに納得できました。

7歳のころ、ペアボートに乗ってにっこりの原田才一郎君
7歳のころ、ペアボートに乗ってにっこりの原田才一郎君

 ほとんどの選手がその厳しさを口にするボートレーサー養成所も、「小さいころから見てた場所に自分がいるのが楽しかったんで、きついとかはなかったです」と言う才一郎選手ですが、芦屋の現地訓練で事故を多発した時にはお父様に手紙を出し、その返事は今でも大切に取ってあるといいます。その手紙には“一番大事なのは、気持ち・精神力”と書いてあって、この時が一番救われたと当時を思い返しながら話してくれました。

 122期の養成所チャンプにも輝いた才一郎選手に対して富士男選手は「『俺は本栖で準優勝やけどね』って言ったら、こいつは優勝して…。水神祭は『デビュー2節目やけどねぇ』って言ったら、今度はデビュー戦で、しかも一発目で取って…。ちょっとずつ地味に上行ってるんよねぇ」と本当にうれしそう。才一郎選手も「父が2節目って知ってたんで、『2節目までに取ったよー』って感じで言ったんです。一番最初の目標ですし、お手本の感じがあって、レースとかもまだまだですけど、自然と父と似てきてる気がするんです」と見ているこちらまで笑顔になるやりとりでした。

 デビュー戦の前も、レースのことはほとんど言わずに陸(おか)の上での作業やあいさつを徹底して話したという父に対して、才一郎選手は「あいさつ・礼儀を大切にして、人間的な部分での指導もしてくれる父ですから、厳しいけど優しいし、優しいけど厳しいですね。そういうところも含めて父を超えていきたい」と話します。

 「早くG1の楽しさを味わって、記念とかでガツガツ戦えるような一流の選手になって欲しい」と話す富士男選手に「すてきな親子ですね」とお伝えしたら、「すてきより“無敵”な親子になりたいです」と返ってきました。

 すてきで無敵な親子から目が離せませんね♪

 
 

 デビュー戦、初出走・初1着を取った時、「見とるんかなぁって自然と父の顔が出てきました」という才一郎選手。「今は、親子としても話す範囲が広がったり、同じ仕事の話ができることで、少しずつ父に近づけてる気がしてうれしい」と話したその最後に「言わないですけど、(父のこと)大好きです」と、少し照れながらもはっきりと答えてくれました。