今回ご紹介するのは、デビューから27年目を迎えた小羽正作選手(45=福岡)。「最近は、ここまでよくやってこれたなぁって思いますねぇ」とこれまでを振り返って出た言葉は、小羽選手らしい謙虚でたくさんの感謝が詰まったものでした。

ご家族への思いをパワーの源に、周りの方への感謝も忘れない小羽正作選手
ご家族への思いをパワーの源に、周りの方への感謝も忘れない小羽正作選手

ボートレーサーであるお父様(小羽作さん=登録番号1723・14期)の仕事を認識はしていたものの、「今みたいに、どこにいてもパソコンとかでレースが見れるというわけではなかったんで、父が仕事をしてるところを見て『かっこいい!』とかそういうイメージは全くなかったんです。何日も連絡が取れないとかの日常のイメージの方が強くて、父のレースも引退の時のをビデオで見ただけなんですよ」と意外なお話も聞かせてくださいました。

そんな近くて遠いボートの世界に飛び込む決意をした理由を尋ねると「何か劇的な事があったとかじゃないんです。ただ、高校を卒業したら“仕事に就かないかん”という考えがあって、その時におやじと同じ選手をやれたらいいなぁって自然と思ったんですよね」と、高校3年生の秋に試験を受けたことを話して下さいました。

残念ながら1回では合格できませんでしたが、翌春、お父様が引退された直後に受けた73期の試験で本栖に入った小羽選手。

「浪人中、バイトだけで家にいるのが親にも迷惑かけて申し訳ないなと思ってたし、高校の同級生とかはもうちゃんと仕事してたんで、自分も早く社会人になって仕事せなって思いがあったんですよね。だから、とにかく本栖に入った以上、ここから帰れない! ちゃんと卒業して選手にならないと! という意識は高かったと思います」という通り、その1年後には見事“ボートレーサー”というバトンを受け取ってデビューすることになりました。

「でも実は、1~2年してもなかなか成績も上がらなくて、もうやめようかなぁって思ってたんですよ。自分は、ぶきっちょだけん、どうしたらいいのかも全然、分からんかったですし」と最初の壁を感じていた時、声をかけてくれたのが、同期の森林太選手(46=長崎)でした。「太はそん時もうA級で頑張ってて、『正作、1枚作ってやるけん頑張れ!』ってプロペラ教えてもらったんです。それで乗ったらポロポロって成績が取れたんで、全く自分が下手くそで成績が出ないってことじゃなくて、そういう条件に合えば自分でも取れるのかなぁって感覚になれた、その一番のきっかけをくれたのが森林太です!」ということで、その時のことを森林選手にお話をうかがうと…「いやぁ逆ですよ! 僕がF2した時に遊びに来い! って言ってくれたり、あいつほんと面倒見がいいし、人間が優しいんです。なかなかそんな、人がしんどい時に手を差し伸べてくれる人って少ないし、全然裏表ないし、絵にかいたようないいヤツ…いやそれ以上だから、絵に描けないくらいのいいヤツです。僕、あいつには頭が上がらないですから」と小羽選手のお人柄がそうさせるんだと力説してくださいました。

小羽正作選手と同期の森林太選手。選手として壁を感じたときに、声をかけてもらったそうです
小羽正作選手と同期の森林太選手。選手として壁を感じたときに、声をかけてもらったそうです

そんな小羽選手が「これまでの27年間を支えてくれたのは、やっぱり周りの人と家族ですよね」と、次に話してくれたのはご家族への思い。

「実は3年前に妻がちょっと病気をしましてリハビリが必要なんですけど、一緒に歩くトレーニングとかしてると、嫁も一生懸命頑張って、歩くペースがどんどん早くなってるのが分かるんです。2人きりでカラオケに行ったりもするんでそういうのも楽しみですし、おふくろはおふくろで家事を全部やってくれてる。子供も大きくなって頼もしくなってきてるし、そうやって家族が仲良く心配事とかないように仕事に送り出してくれるから、自分も頑張ろう! って思えるんですよね」と家族みんながそれぞれのことを頑張ってるから、それが自身の頑張るパワーになるんだと話してくれました。

ご自身を「臆病者の…どちらかっていうと受け身で不器用な人間です」と話す小羽選手の穏やかな強さの源は、周りの方への感謝の気持ちと、ご家族との大きな絆なのかもしれませんね。

 
 

選手としてデビューが決まったときには「良かったね。頑張れよ」という短いお祝いの言葉と、たたいたプロペラを準備してくれていたというお父様。「優しくて、酒飲みで、あんまり家にいない。でも2~3カ月に1回、天草に泊まりがけで魚釣りに連れていってもらうのが、子供の頃はすごく楽しみでした。7年前に亡くなってからは、仕事に行く前に必ず『○○(レース場の名前)行ってくる』と手を合わせてるんで、もし優勝したら、すぐに報告したいですね。」と優しい表情で話して下さいましたよ。