日本代表MF香川真司(28=ドルトムント)が、貴重な先制ゴールを決めた。前半8分、久保からの右クロスをゴール前で受けた。相手DFが止めに入る。シュートフェイントをかけて1人、2人とかわした。最後は4人に囲まれながら、その間にシュートを押し込んだ。香川らしい1発は最終予選初得点。開始すぐ、日本に歓喜をもたらした。

 「UAEに勝って、ホームでも必ず勝たなければいけなかった。(得点は)うまくシュートフェイントを入れて、ゴールに流し込むことができた。必ず勝たないといけない試合を、みんなでしっかり勝ちきったのは良かった」

 苦しんだ。所属のドルトムントでは今季、不動の存在とは言い難い。孤独なドイツでの単身生活。愚痴をこぼす相手もいない。そんな時、いつも私生活でも仲のいい長友に連絡をした。互いに励まし、折れそうになる心を支え合った。どうしても気が紛れない時は、ドルトムントからデュッセルドルフまで車を飛ばすこともある。日本食レストランの多いデュッセルドルフで、なじみのカレー屋で懐かしい味を口に運びながら、翌日の練習へと切り替えた。

 本田、長友らかつての主力選手は所属クラブで出番を失っている。そんな中で、香川もチームでは不安定な状態ながら、欧州で自らの価値を示そうと必死に戦っている。今回の合宿合流直前となる11日のヘルタ戦、17日のインゴルシュタット戦と2戦連続で先発。復調が、この日の得点へとつながった。前半29分にフリーのシュートを外す場面もあったが、後半29分に清武と交代するまで奮闘した。

 「6月(の最終予選)もしっかりと勝ちたい」

 14年W杯ブラジル大会は、期待されながらも不完全燃焼で終わった。先発を外れたこともあった。悔しさを糧に、目指す18年ロシアへの道。日本の10番が、ようやくエースらしい仕事を果たした。