【水原(韓国)23日】U-20(20歳以下)W杯で1次リーグ突破を目指す日本代表は今日24日、ともに勝ち点3で並ぶ南米王者のウルグアイと対戦する。2戦連発を狙うMF堂安律(18)は幼い頃から「天才少年」と呼ばれてきた強豪打破のキーマン。水原近郊で行われた練習でも初戦と同じ主力組の右サイドに入り、最終調整を行った。

 日が暮れた水原近郊の練習場。堂安の顔には強い覚悟が表れていた。主力組の右MFで最終調整。南米王者との対戦を前に「相手がビビるぐらい仕掛けるしかない」と言い切った。南アフリカ戦に続く2試合連続得点もかかっている。「チームを勝利に導きたい」と力強く意気込んだ。

 堂安の原点は地元の小さなクラブだった。8歳年上の兄麿(まろ)さんと3歳年上の兄憂(ゆう)さんが通っていた兵庫・尼崎市の浦風FC。幼稚園の時から兄2人について行き、隅っこでボールを蹴った。相手をしてくれたのは最初の恩師の緒方清コーチだった。

 「律、楽しいサッカーしような」。飾らない緒方コーチの言葉でサッカーを好きになった。強豪クラブではなかったが当時を知る田村将行さん(62)は「律は1人技術がずばぬけていた」と振り返る。堂安も、もっと上達したいという気持ちになっていた。

 だが転機は突然やって来る。小学4年の時。大好きな緒方コーチが急にグラウンドへ姿を見せなくなった。しばらくして再び来た時には帽子をかぶり、体はやせ細っていた。大病を子どもたちに隠し「楽しいサッカーをしよう」と言い続けた。そして別れの時は来る。堂安にとって恩師の死は悲しいものだったが「きっかけになった」と大きな決断もした。

 10歳で強豪の西宮SS(兵庫県西宮市)に“移籍”を決めた。西宮SSで出会った早野陽コーチ(33)は「第一印象は負けず嫌い。サッカーに自信があった」。楽しいサッカーから結果と内容も求められるようになった。堂安少年も「優勝を目指したい」と口にするようになり小5の時には関西の頂点に立った。小学生時代、2つのクラブで学んだ純粋な楽しさと勝利へのこだわり。18歳のレフティーは、その2つを胸にゴールを目指す。【小杉舞】

 ◆堂安律(どうあん・りつ)1998年(平10)6月16日、兵庫・尼崎市生まれ。中1からガンバ大阪ジュニアユースに入団。12年に史上初のU-15世代の3冠達成に貢献。16歳11カ月11日の時ACL・FCソウル戦で公式戦デビュー。昨季、高3で飛び級トップ昇格を果たした。J1通算13試合3得点。172センチ、70キロ。