サッカー日本代表監督を電撃解任されたバヒド・ハリルホジッチ氏(65)が21日、涙の再来日を果たした。自宅のあるフランスから羽田空港着の航空機で到着。解任に怒り27日には都内で反論会見も用意されているが、羽田空港では涙をこらえ、震える声で「真実を探しに来ました」「ゴミ箱に捨てたような状態」「まだ終わっていない」「私の誇りを傷つけるようなところは闘わなければならない」などと訴えた。

 ハリルホジッチ氏は今にも泣きだしそうだった。「日本に来る時はいつも、喜びを持っていましたけど…」と口を開くと、3年間付き添った樋渡群通訳が言葉に詰まりおえつを漏らした。すぐに涙を見せまいと外していたサングラスを掛けたが、言葉は震え、弱々しかった。就任から約3年。初めて見せる姿だった。

 解任に一切納得はいっていない。愛する日本で、誇りを持って取り組んできた仕事を奪われた形となり落胆。表情に生気はなく、あの一方的にまくし立てる口調でもなかった。

 「何が起きているのか、まだ理解できていない状況です。真実を探しに来ました。本当に、公に、私は真実を知りたい。私をうんざりさせるような状況に追いやって、ゴミ箱に捨てたような状態」

 日本協会の田嶋会長からパリに呼び出され、W杯まで約2カ月という状況で予想もしていなかった解任を告げられたのが7日。悪夢の夜からちょうど2週間。今回の対応を、ポイッとゴミ箱に捨てられたと取り、ストレートに表現した。

 27日には反論会見が設定されている。本来この日も話すかどうか、分からなかったが、報道陣100人超が詰めかけパニックになった空港でひと言だけと言い、本当に2分32秒と短い心からの叫び。これまでの監督としての話しぶりと比較すれば本当に短いが、皮肉にもその分、脱線することなく、的を射ていた。

 「私はまだ終わっていない」と2度口にした。監督のままならこの日のこの便で欧州組視察を終え再来日するはずだったが、そのままの便でやって来た。日本では西野ジャパンが誕生し「前監督」となったが、この現実を受け入れるのは到底無理なよう。不気味なほど静かに言った。

 「私の誇りを傷つけるようなところは、闘わなければならないと思っています」と。【八反誠】

<ハリル前監督の解任劇>

 ▼3月23、27日 日本代表ベルギー遠征で、W杯に出場しないマリ(1-1)とウクライナ(1-2)相手に1分け1敗に終わる。

 ▼下旬 日本協会の田嶋会長が選手、西野技術委員長(当時)らの聴取開始。

 ▼4月3日 田嶋会長が西野委員長に、解任方針と監督就任を水面下で打診。

 ▼6日 田嶋会長が西野委員長と2度目の面会後、パリに向けて極秘出国。

 ▼7日 パリ市内のホテルに田嶋会長がハリルホジッチ氏を訪ね、W杯2カ月前での契約解除を通告。

 ▼9日 田嶋会長が帰国し、解任発表。後任に西野氏が就くことも報告した。

 ▼10日 ハリルホジッチ氏がフランス・リールの自宅で「うそだ、でっち上げだ、陰謀だ」と怒り狂う。

 ▼12日 西野新監督が就任会見。オール日本人スタッフの新組閣を発表。