日本代表が「結束力」で難敵を撃破した。アジア杯決勝トーナメント(T)1回戦のサウジアラビア戦で、日本代表森保一監督(50)は17日の1次リーグ・ウズベキスタン戦に続き2試合連続でメンバーを10人入れ替えた。右臀部(でんぶ)痛のFW大迫勇也(28=ブレーメン)を3試合連続で欠き、MF青山敏弘(32=広島)が負傷離脱の苦境を柔軟な選手起用で乗り切り、4戦全勝で8強入りを決めた。24日の準々決勝(ドバイ)ではベトナムと対戦する。

森保監督の紅潮した顔が、厳しい戦いだったことを物語っていた。終了と同時に、小刻みに両手のひらを何度もたたき合わせ、速足でベンチのスタッフと選手に右手を差し出していった。ボール保持率は02年W杯日韓大会以来の最低を約10%も下回る23・7%。3枚の交代カードを全て切るなど手を尽くして1得点を守り抜いた。「選手たちが粘り強くタフに戦ってくれて、無失点に抑えて勝つことができて良かった」と8強入りの喜びをかみしめた。

思い切った策が功を奏した。決勝T進出を決めた状況で臨んだ1次予選3戦目のウズベキスタン戦では、サブ組を10人起用。主力を温存して、中7日と休養十分にして決勝T初戦に備え、この試合でも10人をチェンジ。後半に何度もゴール前に攻め込まれたが全員が体を張り続けた。2試合連続の10人入れ替えがはまり、指揮官は「コンディションが上がってきているからこそ、あれだけ押し込まれても粘り強い守備ができたかなと思っている」とうなずいた。

総力戦を掲げて挑む今大会。全23選手に心を配る。DF槙野は「選手の観察とマネジメントはすごくたけてる方。特に出てない選手へのアプローチが素晴らしい」と目を見張る。1次リーグ最終戦翌日には「試合に出てないからずっとフレッシュかと言えばそうじゃない。みんな頭を使って、試合のところは戦っている」と、サブ組も含め全員にオフを与えた。

目配りと心配りが、結束力をさらに高める。試合前、負傷離脱するMF青山から「自分にとっては今日が決勝だと思っています」と託された。広島の監督時代から知る指揮官も、ともに戦ってきた選手も無念さを理解し力に変えた。2戦連続10人入れ替えの大胆策も、史上初の国際Aマッチでフィールド選手全員が海外組という編成でも、そんな風通しの良さがあるからこそ結果につながっている。

決勝Tの最初のヤマ場を突破し、次戦はベトナム。FW武藤が累積警告で出場停止となり、FW大迫の出場も不透明。中2日と日程面も厳しいだけに再びスタメン変更も予想される。森保監督は「相手よりも準備期間、回復期間が短い中、最善の準備をして次の試合に臨めるようにしたい」と結んだ。全員の力を束ねながら、頂点まで柔軟に指揮を振るう。【浜本卓也】

 

◆試合データ AFCの公式サイトによれば、日本のサウジアラビア戦でのボール保持率は23・7%(サウジは76・3%)。サッカー分析会社「データスタジアム」によれば、02年W杯日韓大会以降の計266試合で過去最低は34・0%。ハリルホジッチ監督時代の16年10月11日、18年W杯ロシア大会アジア最終予選のオーストラリア戦(1-1)で記録された。今回はそれを下回った。総パス数も日本197本、サウジ659本と大差。ただ、30メートル以上のロングパスに限れば、日本76本、サウジ77本とほぼ同じ数字だった。