【シャルジャ(UAE)22日】日本が決勝トーナメント1回戦でサウジアラビアを下し、8大会連続の8強入りを決めた。1-0で勝ったものの、02年ワールドカップ(W杯)日韓大会以降では最低のボール支配率23・7%を記録。異例の展開も割り切れた背景には、普段は守勢に回る機会の多い海外組の経験があった。担当記者の独自視点「Nikkan eye」で分析する。チームは24日の準々決勝ベトナム戦(ドバイ)に向け、宿舎で回復に努めた前日の先発組11人を除く11人で練習した。

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日本は1-0でサウジアラビアに勝ったが、02年W杯日韓大会以降267試合目にして最低のボール保持率23・7%を記録した。前半は30・2%、ハーフタイム後は17・2%まで下がった。日本が、後半だけとはいえ82・8%もボールを持たれた。アジア杯で、前年のW杯出場国同士で-。

主な理由を3つ考えた。

(1)プレス断念-。前から奪いに行く「守備もアクション」はロシアからの合言葉。序盤から実践したが、主審の笛が鳴り続けた。1試合でファウル27回は今大会最多。待ち受ける対応に変えざるを得なくなった。

(2)早い先制-。前半は0-0も想定していたが、20分の最初のCKを冨安が決めた。リードし、むやみに攻める必要がなくなった。

(3)キープ困難-。大迫が不在。後半途中からトップ下に入った堂安も「タメをつくれなかった」と反省した。耐えて奪っても、すぐ失っては、数値を下げた。

それでも勝つと、ふとマシンガントークを思い出した。17年9月。ハリルホジッチ元監督が親善試合のメンバー発表そっちのけで「ポゼッション(保持率)が高ければ勝てる、は幻想だ」と大演説した。37・6%だったパリサンジェルマンがバイエルン・ミュンヘンを3-0で圧倒した欧州CLが題材。確かに、W杯出場を決めた同8月の最終予選オーストラリア戦も38・2%だったが2-0で完勝した。本大会で優勝したフランスも、準決勝ベルギー戦、決勝クロアチア戦とも30%台だった。それでも勝ち切った。

今回はアジア。印象は良くない。それでも割り切れた背景には海外組の免疫があった。くしくも、フィールドプレーヤーの先発10人が全員海外組だった代表史上初の試合。日本人はまだ中堅クラブ所属が多く、それぞれのリーグに格上がいる。原口はBミュンヘン相手に自軍のゴールラインまで下がり、攻撃的な酒井もパリサンジェルマン戦では防御優先。南野のザルツブルクは国内5連覇中だが、欧州リーグでは他国上位と当たる。守備力がないと評され、ボランチがFW起用されてベンチを温めた時期もある。そこを乗り越えた献身性をサウジアラビア戦で発揮。攻撃は不完全燃焼も、守備で貢献していた。

結果、被シュート15本のうち枠内1本。持たせたことで相手は攻め疲れ、最後に打ち損ねた。ビッグクラブを知る前インテルミラノ長友は実感を込める。「(7連覇中の)ユベントス戦は、持たされて最後にカウンターとセットプレーでやられる。強いチームは、やり方を変えられる。ボールを持てなくても勝つ」。日本のカウンター精度は遠く及ばなかったが、そうなっていくためには通る道だったと信じたい。【木下淳】