【パリ10日=益子浩一、栗田成芳】日本にはカガワがいる!

 日本代表FW香川真司(23=マンチェスターU)が歴史を塗り替える。日本代表はパリ郊外で今合宿初めて非公開の練習を行った。右ふくらはぎ痛のMF本田圭佑(26=CSKAモスクワ)は依然別メニュー調整で、出場はピンチ。FW前田も負傷離脱した中、残された香川が攻撃の中軸を任される。過去5戦全敗のフランス戦(12日)を、2年後のW杯で世界を驚かす序章とするため、敵地で初金星を狙う。

 窮地にも余裕の笑みを浮かべた。フランス入り後、初めての非公開。公開された冒頭15分、香川はリラックスした表情で長友や今野と笑顔で話した。「お互いのよさを出すために、わかり合う必要がある。それぞれの選手と連係が大事。1人じゃなくてチームとしていい形をつくる」。前日までの練習で豊富なバリエーションを披露。左サイドにとらわれず、タイミングを外した左クロス、中へ切れ込むドリブル、スキを見て放つ強烈なミドルシュート。トップ下でなくても周りを生かし、自分も生きる。

 強烈な個性で引っ張る本田の出場が危ぶまれる中、1トップの前田も離脱。FW岡崎は負傷のため招集さえ見送られた。W杯最終予選で固定して戦ってきた攻撃陣が、次々と消えていく中で残ったのは香川だけ。「しっかりボールを保持しながら戦う必要が、絶対ある。個人で打開できるチームじゃない。そこをいかに強豪相手にできるか、試されるゲーム」。それが香川流のイメージだ。

 すべては歴史を覆すため。日本サッカー史上5度戦いを挑み、すべて苦杯をなめてきた強敵フランス。「こういう相手とやることが、僕たちの望んでいた戦い。代表として世界を目指している中で、いかに結果を出せるか」。J史上初めてユース所属以外の選手としてC大阪とプロ契約、ブンデスリーガ連覇、超名門マンU移籍と、何度も常識を塗り替えてきた。相手がどこだろうが関係ない。

 あらためて“ホームの欧州”で地の利を実感している。前回のW杯予選イラク戦(9月11日)を腰痛で緊急欠場し力になれなかった。それだけ欧州-日本の長距離移動は大きな負担。「移動がないし時差もないので、僕らにとって欧州でやっている感覚でプレーできる。状態はいい」。日本で夜中に何度も起きては寝てを繰り返す時差ボケに、苦しむ心配はない。

 マンUでもサイドに配置されるなど苦闘は続く。それでもフランスメディアから取材を受け注目を集めるKAGAWAは言う。「アウェー8万人の中でプレーできることが楽しみ。絶対できる。1人1人が自信をもってチームとして戦えたとき、必ずいい結果がついてくる」。苦境を乗り越えたとき、代表での汚名返上、欧州での名誉挽回が待っている。【栗田成芳】