カズは、Jリーグ初の50歳ゴールを決めた暁には会心の笑顔で「カズダンス」を披露するだろう。両手をグルグルと回しながら細かいステップを踏む。最後は股間に左手を添え、右手は人さし指を突き上げるのが基本形だ。始めたのはブラジル・サントスと初のプロ契約を結んだ86年、19歳のころだった。

 カズ ブラジルにいる時に(当時ブラジル代表の)カレカが、セリエAナポリでマラドーナと活躍していた。当時はイタリアが世界最高峰リーグで外国人枠も狭くてトップのトップしか行けなかった憧れの舞台。カレカが(得点時に)サンバのような動きをやっていて、やりたいと思った。

 日本で初披露したのは89年、テレビ朝日系の番組「ビートたけしのスポーツ大将」だった。公式戦では読売(現東京ヴェルディ)時代の92年4月、ゼロックス・チャンピオンズ杯決勝。親交があるタレント田原俊彦の意見も参考に改良し「完成したら(サンバとは)全然違っていましたね」。93年のJ開幕後はサッカー少年らがまねて日本中に広まった。

 FC東京のFW大久保らはカズ公認で節目のピッチで踊るなど選手にとっては憧れの儀式でもある。11年3月29日の東日本大震災の復興支援チャリティーマッチでは喪章をつけてステップを踏んで被災地にエールを届けた。30年を超えたカズダンスの歴史はまだまだ続く。バースデーダンスまで、あと1日だ。【鎌田直秀】