アスルクラロ沼津がJリーグ1勝を飾った。今季からJ3に参入し、藤枝MYFCとのJ3静岡ダービーを初開催。ホームの利を生かし、4-1で藤枝に快勝した。前半42分にFW小牧成亘(24)が同点ゴールを挙げると、後半はFW薗田卓馬(23)の勝ち越しゴールなどで3点を追加。東部地区初のJクラブとして、また大きな1歩を刻んだ。

 歴史的な勝利の喜びを全員で分かち合った。元日本代表FW中山雅史(49)MF伊東輝悦(42)らベンチ外の選手も集まり、応援席前で歓喜のダンス。ゴール裏のサポーターも総立ちで踊った。チームは開幕2戦目でJリーグ初勝利。それを初のJ3静岡ダービーで飾り、吉田謙監督(47)は「非常にうれしいです」と手放しで喜んだ。

 エースの一撃が口火となった。1-1で迎えた後半18分、FW薗田が中央を抜け出し、右足でゴール右隅へ流し込んだ。「今日は何としても決めたかった」。昨年のJFLでチーム得点王がJ初ゴールを決め、流れは好転。その後も手数をかけない速い攻撃から終盤に2点を追加した。

 東部地区にとっても悲願の1勝だ。クラブの前身となる「沼津アーセナル」は1977年(昭52)に創設。当時の所属は、現体制なら10部リーグにあたる「東駿河湾リーグ」から戦った。選手が集まらず、存続の危機もあった。今や全国出場常連となった下部組織も1年目は選手2人からスタートした。それでも、地域に根差した指導で選手を育て、トップチームも着実に力をつけて勝ち続けた。

 吉田監督は試合前のミーティングで言った。「東部地区はサッカー不毛の地と言われてきた。そこで歴史をつくるためには勝つしかない」。選手もそんな地域の思いを胸に戦っていた。

 来月1日には三島駅前にクラブの新たな事務所を構えて普及活動を広めていくという。DF尾崎瑛一郎主将(32)は「歴史は続いていく。満足せずに勝ち続けていきたい」と言った。創設から40年-。沼津が東部地区の誇りになろうとしている。【神谷亮磨】