勝負は、キックオフ前についていたのかもしれない。

ピッチに散らばった瞬間、鹿島アントラーズの選手たちは天津権健のフォーメーションの変化に気づいた。第1戦や直近で採用していて予想した4バックではなく、3バック。中盤では横に5枚、並んでいた。

即座に声を掛け合った。「DFラインの両脇が空く。そこを突いていこう」。サイドハーフの守備位置や、センターバックがカバーに出た際のボランチのケア-。選手自らが判断し、対応した。得点が必要な相手が前がかりになることは分かっていた。何よりも「我慢」を言い聞かせて試合に臨んだ。だから、序盤に元ブラジル代表FWパトを中心に攻め込まれても、辛抱強く耐えられた。

「立ち上がりのピンチでみんなで体を張って失点をせず、先制点を取れたことが非常に大きかった。2点目を取れたが、2-0はサッカーで1番危ない点数なので後半もう1点取り…試合は荒れたが、その中でみんなで戦った」。MF三竿健斗が胸を張った。

前半13分のFWセルジーニョの先制点で勢いに乗り、同27分にMF安部裕葵が追加点を挙げる理想的な展開。後半21分にはFW土居聖真がとどめを刺した。そして、第1戦に続いて完封した守備陣の踏ん張り。クラブ史上初の4強は、全員の力でもぎ取った。

大岩剛監督は「ベスト4進出は非常にうれしい。クラブとしても悲願ですし。ただ、我々の目標は優勝に置いている。そのためにしっかりと準決勝の準備をすることしか頭にない。その先に、結果がついてくればいい」と気を緩めることなく、前を見据えた。