全国高校サッカー選手権が30日に開幕した。冬の風物詩でもある大会が98回目を数える間に、高校生をとりまく環境は変化を続けている。

大会期間中、日刊スポーツでは「高校サッカーの現在地」と題して、現状、課題など高校生、ユース年代のサッカーについて、随時連載する。第1回はJリーグ発足以降、選択肢の増えたサッカー環境。高校(高体連)、Jユースに加え、海外で成長を遂げる選手も出てきている。

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全国高校サッカー選手権の始まりは1917年。34年にはほぼ現行の方式ができあがった。部活動という日本独自の文化で日本一を競い合ってきた。

91年Jリーグ発足後、プロクラブのユース整備が進み、06年には各世代別日本代表は、高校出身ではなく、Jユース出身者が半数を超えた。11年にはJユースと高校の強豪同士がリーグ戦を行い、ユース年代の最高峰といわれる東西プレミアリーグが設立。参加20チームの中で高校の数は今季6から来季4と設立以来最少になる。

Jユースの進化で勢力図が変化する一方、A代表になると現在も高校出身者が多いことも事実。ベスト16に進んだ18年W杯ロシア大会でも23人中12人が高校出身者だった。日本サッカー協会(JFA)の技術委員で暁星高の林義規監督(66)は「価値観の違う人と接することが大切。サッカーに価値を感じない人もたくさんいる。『サッカーができるからいい』という感覚にならないこと」と、教育の一環としての部活動の長所を口にする。

現在、高校年代の選手は大きく分けて(1)部活動(2)高校に通いながらJユースクラブ(3)通信制の高校に入ってJユースクラブの3通りある。近年は今大会の3年生と同年代の久保建英のように、幼少期から海を渡る選手も出てきた。17歳のMF中井卓大はRマドリードの下部組織に所属。かつて「夏の甲子園、冬の選手権」とも言われたが、時代は変わった。事実上、一本道の高校野球と比べ、サッカーの高校選手権は全員が出るものというより、選択肢の1つという位置づけになりつつある。【岡崎悠利】