<ワールドカップ(W杯)ロシア大会:日本2-1コロンビア>◇1次リーグH組◇19日◇サランスク

 正直、勝てると思っていなかった。負けか、よくて引き分けか…。ポジティブな要素を探すのは難しかった。開始早々に相手が10人になっても、前回大会のギリシャ戦を思い出して勝てると思えなかった。根がネガティブなのか、負け癖なのか、コラムも「負け用」ばかりを考えていた。

 「西野さん、ごめんなさい!」。まったく、信じていませんでした。直前の監督交代。今回は直接の取材をしていないけれど、次々と出てくる前向きなコメントに「もっと危機感を持ったほうが」とも思った。周囲の反応も同じ。テレビでは「勝てる」と言っている評論家でも「へたすれば3連敗」という声だった。

 もちろん、得点が少なく番狂わせが多いサッカーだから何が起こるか分からない。「どっちが勝つ」と聞かれると「分からないけれど、日本が勝つとしたら1-0以外ない」と答えていた。しかし、スコアは2-1。守って守ってカウンターではない。しっかり戦って、しっかり勝った。

 もちろん、相手が10人になったことは大きい。数的不利になった相手はブロックをひいて守り、カウンターを狙っていた。しかし、ボールの出どころになるボランチに重圧をかけ続け危なげなく守った。シュートの精度は相変わらず高くなかったが、最後は大迫の頭で勝ちきった。前回大会の惨敗がうそのようだった。

 開始直後、香川のロングボールから一気に攻めた。大迫のシュートのこぼれ球をシュートしたのは香川だった。格上の相手に「ガツン」と先制パンチを食らわせ、受け身になったところで畳みかける作戦だったのか。番狂わせを起こす時の定番とはいえ、西野采配はあまりに見事だった。

 実は、西野さんはアイドルだった。スラリとした長身から華麗に出すパス、ユニホームも汚さないスマートなプレー。部屋にはオランダ代表のクライフと並んで雑誌の付録のポスターを飾っていた。早大から日立と何度も試合を見た。あの釜本さんと並ぶ8試合連続得点の日本リーグ記録も取材した。だから「ごめんなさい」。これで日本は盛り上がる。サッカーに興味がなく、ワールドカップに無関心だった人も、目が離せなくなる。【荻島弘一】