1次リーグ屈指の好カード、16年欧州選手権覇者ポルトガルと、10年W杯覇者スペインのライバル対決は、いきなりの快挙で幕を開けた。ポルトガルの絶対的エース、FWロナウド(33=Rマドリード)が偉人に並んだ。前半4分にペナルティーエリア左にまたぎフェイントを挟んで前進すると、DFナチョ(28=Rマドリード)に足を引っかけられてPKを獲得。クラブでのチームメートにしてやったりの展開で、しっかりとPKを沈めて、お決まりのポーズでほえた。

 このゴールで4大会連続得点を達成。06年が6試合1得点(4強)、10年が4試合1得点(16強)、14年が3試合1得点(1次リーグ敗退)と続けてきた。58~70年のペレ(ブラジル)とゼーラー(西ドイツ)、02~14年のクローゼ(ドイツ)に次いで史上4人目の4大会連続得点者となり、今大会の主役の1人の存在感を発揮して見せた。

 大会直前に、来季からRマドリードの監督に就任することになっていたフレン・ロペテギ監督(51)が代表監督を電撃解任されたスペインは、いきない出はなをくじかれる格好となったが、次第にペースをつかみ始める。すると前半24分、ロングボールに反応したFWディエゴコスタ(29=Aマドリード)が、2人に囲まれながら技ありの切り返しで右足で低空弾をたたき込んで同点に追いついた。得意の短いパス回しではなかったが、個人技で同点に追いついた。

 そして、さらに勢いに乗る。前半26分にイスコ(26=Rマドリード)のロングシュートがクロスバーを直撃、前半35分にはW杯後にJ1神戸入りが決まっているMFイニエスタ(34=バルセロナ)が左足のダイレクトシュートを放つが、これは惜しくもゴール右にそれた。ボールロスト直後のハイプレスが威力を発揮して、ペースを握った。

 ところが、思わぬ展開で試合は動く。防戦となっていたポルトガルは前半44分、ロングボールの競り合いでFWゲデス(21=バレンシア)が落としたところに、直接左足を振ったのはFWロナウド。グラウンダーの強烈なシュートは、GKデヘア(27=マンチェスターU)の正面をつくと、プレミアリーグ1と言われる名手がボールを後ろに反らしてこの2試合を2点目につながった。

 

 後半10分に、セットプレーから同点に追いついた。正面約25メートルほどの位置からのFKで、FWシルバ(32=マンチェスターC)がゴールの右側に浮き球を送ると、MFブスケツ(29=バルセロナ)が競り勝ってゴール前に頭で折りし、最後はFWディエゴコスタが押し込み、同点に追い付いた。

 さらにスペインに目が覚めるような逆転弾が生まれた。後半13分、左サイド深くでボールをつないで突破を図ると、クロスのこぼれ球の先に走り込んできたのはDFナチョ。低い軌道のボレーシュートが左ポストを直撃して吸い込まれ、歓喜の瞬間を迎えた。前半にはPKを与えるファウルを犯したが、汚名返上の一発となった。

 リードを許したポルトガルは、ボール奪取位置を高めに設定し直して反撃を試みる。選手交代でFWロナウドをよりゴールに近づけたポジションに配するが、好機を生み出せない。反対にスペインは中盤の包囲網を巧みな連携でかいくぐる場面が多くなった。

 最後に試合が動いたのは後半43分。FWロナウドがペナルティーエリア正面でFKを得ると、自らキッカーに。縦に落とす右足からの芸術弾でハットトリックを達成して、土壇場で同点に持ち込んだ。

 試合はそのまま終了。点の取り合いとなったライバル対決は、引き分けに終わった。