今季限りで引退するウサイン・ボルト(30=ジャマイカ)が、男子100メートルに9秒95のシーズン自己最高タイムで優勝。男子400メートルでは世界記録保持者のウェード・ファンニーケルク(24=南アフリカ)が、43秒73でイサック・マクワラ(30=ボツワナ)に競り勝った。女子800メートルのカスター・セメンヤ(26=南アフリカ)の1分55秒27など、今季世界最高記録が5種目で誕生した。

 世界陸上ロンドン大会(8月4日開幕)の金メダル候補たちが、圧勝はできなかったもののしっかりと勝ちきった。

 ボルトはウィニングランを制止されて怪訝な表情を見せたが(次の種目の開始が迫っていたため)、自分の走りには納得している様子だった。

 「良かったよ。10秒を切ったということは悪くはない。まだやるべきことは多いけれど、自分は良い方向に進んでいる」。

 スタートではイサイア・ヤング(27=米国)と蘇炳添(27=中国)がリード。ボルトは後続グループのなかでも後方だったが、まったく問題ない差だった。中盤でトップスピードに乗ると後半でチディンドゥ・ウジャー(23=英国)、蘇、ヤングと一気に抜き去りトップでフィニッシュした。

 2位のヤングとは0・03秒差、6位までボルトから0・11秒差でゴールする接戦だったが、ボルトの走りにはまだ余裕があった。

 男子400メートルのファンニーケルクは200メートルをトップで通過したが、300メートルでは1つ外側のレーンのイサック・マクワラ(30=ボツワナ)に前に出られていた。

 だが、ニーケルクは慌てず直線の中盤でマクワラを抜き去り、今季2度目の43秒台でダイヤモンドリーグ2連勝を果たした。

 「イサックが前に出ていたのでレースプランの変更を強いられたけど、その後は上手く走ることができた。(接戦だったが)自信を与えてくれた勝利だった。ロンドンの2冠(400メートルと200メートル)に向けて順調に来ている」。

 女子800メートルは、カスター・セメンヤ(26=南アフリカ)が一昨年9月から続いている連勝を「18」に伸ばしたが、2位のフランシーヌ・ニョンサバ(24=ブルンジ)とは0・20秒差、3位のアジー・ウィルソン(23=米国)とは0・34秒差の接戦だった。

 「2人が良い走りをしたのには驚かされました。最後までハードなレースでしたが、私の強さは見せられたと思います」。

 550メートルからトップに立ったセメンヤは、ニョンサバに並びかけられても決して前に出さなかった。その表情には、ボルト同様に余裕が感じられた。

 世界陸上前最後のダイヤモンドリーグ。負けていたら不安説が噴出するケースだが、リオ五輪の金メダリストたちがそれを許さなかった。

◆今季の男子100メートル

 ボルトがモナコ大会で出した9秒95は今季世界リスト7位で、接戦の末に破ったヤングは全米選手権8位で世界陸上ロンドンの代表ではない選手。モナコの結果だけで、ボルトが世界陸上のV候補筆頭と言うことはできない。

 全米選手権優勝のジャスティン・ガトリン(35=米国)と、全米2位で9秒82の今季世界最高を6月に出したクリスチャン・コールマン(21=米国)が、五輪&世界陸上では10年ぶりの米国勢Vを目指している。

 ボルトの同じクラブの後輩、ヨハン・ブレイク(27=ジャマイカ)も完全復調。6月に9秒90の今季世界2位を出した。

 ボルトが6月のレースで訴えていた背中の痛みは、ドイツで主治医の治療を受け、モナコでは問題なかった。

 勝敗のカギを握るのはボルトの大舞台での強さだろう。五輪&世界陸上ではその年のシーズンベストを必ず出してきた。その強さがロンドンでも発揮されれば、ボルトが引退の花道を飾る。