11年世界選手権男子5000メートル代表で、東京国際大1年の渡辺和也(30)が2大会ぶり2度目の箱根駅伝出場に貢献した。実業団出身のオールドルーキーは1時間1分30秒でチーム9位。東京国際大は10時間10分34秒で本大会進出ラインの10位に滑り込んだ。昨年の予選会で11位に沈み連続出場が87回で途切れた中大は、10時間6分3秒の3位で2年ぶりの復帰。本大会は来年1月2、3日に行われる。

 順位発表を9位まで終え、本大会出場は残り1枠。渡辺はメンバーと共に目を閉じながら祈った。「10位、東京国際大」。名前を呼ばれた瞬間に拳を握り、約10歳年下の仲間と抱擁を交わし「本当にうれしい」と感慨に浸った。実業団では1万、5000メートルに軸足を置いていたため、予選会の20キロは出場した試合で人生最長の距離。「15キロ地点でペースが落ち、フォームも崩れた」。両足裏にはマメもできた。悔しさをにじませつつ、30歳にして箱根を走る権利を得た。

 昨季まで日清食品グループに所属していた。16年6月の日本選手権は求められていた参加標準記録に届かず出場できず、契約更新は不透明だった。将来に不安を感じる中、セカンドキャリアとして「高校時代から憧れだった」教員、指導者を目指す道を選んだ。教員免許を取るため東京国際大の社会人入試を受験し、合格。3月に退社し、学生生活をスタートさせた。

 世代間ギャップはある。30歳は「チームメートは乃木坂46が好きな子が多い。僕の学生時代はモーニング娘。だったんですけどね」と苦笑い。「みんな最初は変なオッサンが来たぞ、と思ったでしょうね。でも慣れていくうちにいじられるようになった」。この日の記念撮影ではぬれた髪をくしゃくしゃにされた。21歳、主将の鈴木聖人(4年)が「ご飯に行く時は割り勘です」と明かすようにすっかりとけ込んだ。

 チームメートと朝練し、講義を受け、夕方からは部活に打ち込む毎日。豊富な経験を仲間に伝え、この日も緊張をほぐすすべとして「背中の張りに気を付けよう」と助言した。本大会に向けてスタミナが課題。渡辺は「ここからはい上がる姿をぜひ見てほしい」と力強く言った。【戸田月菜】

 ◆渡辺和也(わたなべ・かずや)1987年(昭62)7月7日、兵庫県西宮市生まれ。深津中で競技を始める。報徳学園高卒業後、山陽特殊製鋼、四国電力、日清食品グループに所属。11年の日本選手権5000メートルで優勝し、同年アジア選手権4位、同年世界選手権日本代表。今年4月に東京国際大人間社会学部人間スポーツ学科入学。自己ベストは5000メートル13分23秒15、1万メートル27分47秒79。趣味はゲーム。家族は両親と兄。172センチ、55キロ。

 ◆箱根駅伝予選会 各校14人までのエントリー選手のうち、10~12人が出場する。全員20キロを走り、チーム上位10人の所要合計タイムの少ない上位10校が本戦出場権を獲得。本戦には前回優勝の青学大などシード10校、予選会を突破した10校、予選会の記録上位者を中心に編成する関東学生連合(オープン参加)の計21チームが出場する。