「かっこいい」の追求。スケートボードは、そんな言葉がぴったりのスポーツであると感じる。

 そんなかっこいいスケートボードは、2020年の東京オリンピックでは新種目になっている。日本では「スケボー」と呼ばれることが多い。

 いわゆる「3S(Snow/Skate/Surf)」。ボードスポーツの原点がこの3つだ。この3Sの本質は、楽しむことを目的とした遊びだった。今回サーフィンもオリンピック種目になったことで、3Sすべての種目がオリンピックにそろった。

 競技性としては、少し難しいポジションにいるこのボード競技。

 スケートボードは1940年代からカリフォルニアで木の板に鉄製の戸車を付けて滑った遊びが始まりと言われている。サーフィンの普及から、波の乗れない日にサーファーの練習としても活用された。1950年代に入ると、「ローラーサーフィン」という木製チップとゴム製のホイルが付いたものが販売され、これがスケートボードの原型になったとも言われている。

 日本においては、1970年頃から普及したと言われている。すぐに若者に浸透し、東京・代々木公園の歩行者天国は、スケートボードを愛する若者の聖地になった。人気の上昇から、日本でも競技会が行われるようになり、スケートボードの専用施設が誕生する。1990年に入ると、ストリートの時代になる。ファッション誌や、グラフィックやカルチャーなどのカテゴリーまで作られ、日本は今、ストリートスポーツ大国になりつつあるのだ。

 オリンピックという競技になることで、採点され「かっこいい」の追求とは異なるステージでの争いも見ることになるのだろうか。

 
 

■カツ秋山さんの指導のもと体験


 私は今回、体験取材をさせてもらうことになった。場所は東京・大森海浜公園。公園を歩いて行くと、スケートボードの施設で、スイスイと滑っていく姿が目に入った。小学生たちは、怖いもの知らずにスピードを付けて斜面をクールに滑っている。

 陸の上でのパフォーマンスはどちらかというと苦手だが、なんだか気分が高揚してきて、早く滑ってみたいと感じた。なぜかというと、滑っているライダー全員が笑顔だ。講師の先生たちも、なんだか、年齢不詳。かっこいい。

 私にスケボーを教えてくれたのは、日本で初めてスケートボードの会社を立ち上げた、カツ秋山さん。レジェンドだ。黄色いTシャツに、ゆったりとした短パン。話してみると、ステキな方だった。穏やかさを漂わせた中に、芯の通った爽やかさが印象的だった。

 まず、秋山さんの滑りは「めちゃくちゃかっこいい!」他のライダーの秋山さんの滑りを強い眼差しで見ていた。

 「スケートボードはいかにこいつと戯れられるかだ」

 ボードと足が一体化し、滑る意外にも、様々なテクニックが必要になる。

 オリンピック競技として、新種目になったスケートボードだが、「パーク」「ストリート」の2種に分けて競技を行う。パークは、ボールや深皿系のプールなどを中心に、コースの中で湾曲した滑走面を組み合わせたコンビプールと呼ばれるコースを使用する。ストリートは階段、斜面や手すりなどのコースを使用する。難易度、メーク率、ルーティン、スピード、オリジナリティーなどの要素が総合的に評価される。

 秋山さん曰く、新体操のような要素も必要な競技だという。実際、体験してみてわかったことだが、足の裏の感覚がとても大切。水泳選手でいう手のひらで感じる水感みたいなものだろうか。

 始まる前は少し不安だった気持ちも秋山さんの端的で、丁寧な教え方が感覚を刺激した。徐々に滑れるようになってくるとチックタックやパワースライドなど基本的なテクニックも丁寧に教えてくれたことで出来るようになる。どんなことでも「できた!」この気持ちは次へのモチベーションにつながる。あらためて、チャレンジすることや、知らないことを知ることは、人生の活力を生む。

 普及していくということは、知られること。知られることは応援されるために大切なこと。

 スケボーに魅了された若者がさらに、日本がストリートスポーツ大国だということを、クールなアクションで世界を魅せる日が待ち遠しい。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳日本代表)