96年アトランタ五輪銅メダリストの十文字貴信(43=茨城)が、1月15日付で引退していたことがわかった。関係者によると、落車による骨折や持病の腰痛の悪化で引退を決意したという。

十文字は95年のデビューから8カ月でS級昇級。自転車競技がプロ解禁となった96年アトランタ五輪の1キロTT(タイムトライアル)を1分3秒261で見事銅メダル。プロの競輪選手として初めて五輪でメダルを獲得し、アスリートとしても一躍スターの仲間入りを果たし、メダルの功績で同年KEIRINグランプリにも出場した(落車棄権)。ともに五輪出場した神山雄一郎との連係は「アトランタライン」と呼ばれた。

ただ競輪選手としては重度の腰痛や相次ぐ落車負傷で、長期戦線離脱を余儀なくされ、99年全日本選抜決勝3着がG1での最高着順。近年は弟子育成にも注力し、次代を担う吉田拓矢らを送り出した。96年、彗星(すいせい)のごとく現れたスターが静かに輪界を去った。

アトランタラインを組んだ神山雄一郎は「ええっ!? 本当ですか。全然知らなかった。でも、体のことだから仕方がない。(ナショナルチームで)世界も一緒に回った間柄だし、寂しいですね」と、引退を惜しんだ。

 

◆十文字貴信(じゅうもんじ・たかのぶ)1975年(昭50)11月10日生まれ、千葉県関宿町(現野田市)出身。取手一高卒。競輪学校75期生として95年4月8日宇都宮でデビュー。96年アトランタ五輪1キロTTで銅メダルを獲得。G3優勝1回(旧制度4回)。通算1512戦186勝、通算獲得賞金5億4305万1400円。177センチ、83キロ。血液型A。