単独首位から出たタイガー・ウッズ(42=米国)が2バーディー、3ボギーの71とスコアを落としながら、通算11アンダーの269で逃げ切った。第1日からトップを譲らない完全優勝で13年ブリヂストン招待以来1876日ぶりのツアー通算80勝目。サム・スニード(米国)の史上最多82勝、さらにはあと4勝と迫ったジャック・ニクラウス(米国)のメジャー通算18勝という2つの大記録への道筋に再び光が差した。

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1年半ほど前まで、とてもゴルフをできるような状態ではなかったタイガー(ウッズ)を考えると、驚異的としか言いようがありません。昨年4月に腰を手術するなど体の変化に対し、スイング途中の急加速がなくなり、トップからフィニッシュまで自然な回転で打てています。ひたすら強く振ってきた選手が優しく振るのはとても難しい。というのも、意識的に優しく振ろうと思っても、脳の奥底に記憶されている昔ながらのスピード感が強く振らせようとして脳と体に距離感が生まれてしまうからです。そのスイングをこの短い期間で作り上げてきたタイガーは、やはり超人的です。

今大会を見ていてあらためて感じたのは、パッティングのすごさです。あれだけラインに真っすぐ立てる人はいません。誰よりも真っすぐ立ち、左手でかじを取って右手で距離感を出し、誰よりもきれいに1メートルのパットをカップの真ん中から入れる。ミドルパットでも1メートルくらい先のポイントを打ち抜くことでラインに乗せることができますから、長い距離も決められる。3パットが第1日の1番だけだったこともうなずけます。最高峰のパットが戻ってきていると感じました。

昔の方がすごみや躍動感はあるかもしれませんが、今の方がむしろ静かな強さを感じる瞬間が増えました。ツアー復帰したシーズンでこれだけ仕上げ、トップ30しか出られない最終戦のツアー選手権で優勝する。漫画のようなストーリーは、さすが神の領域にいるタイガー。感動で涙がこぼれる思いです。(プロゴルファー田中秀道)