金メダリストが「さすらいの柔道家」になる。リオデジャネイロ五輪柔道男子90キロ級金メダルのベイカー茉秋(22=東海大)が25日、神奈川県内で行われた東海大の卒業式に出席し、今春から「さすらいの柔道家」になることを明かした。

 4月から日本中央競馬会に入社するベイカーは、今後について「練習拠点がないので、いろいろな場所で出稽古します。たくさんの相手と組んで柔道の幅を広げてさらに成長したいです」と語った。日本中央競馬会での配属先は不明だが、曜日ごとに東海大や他大学、企業の道場などを回る予定という。

 東海大出身のリオ五輪男子60キロ級銅メダルの高藤直寿(23=パーク24)や同五輪100キロ級銅メダルの羽賀龍之介(25=旭化成)らは卒業後も東海大を拠点として稽古を重ねている。日本中央競馬会には同五輪100キロ超級銀メダルの原沢久喜(24)や世界選手権代表経験のある選手らが所属する。ベイカーは原沢と同じ寮に住み「原沢先輩と一緒にいろいろな場所で稽古するのもありだと思う。(社会人になる)不安もあるけど楽しみです」と、新生活への期待に胸を膨らませた。

 今夏の世界選手権(ブダペスト)の最終選考会を兼ねる4月1、2日の全日本選抜体重別選手権(福岡国際センター)に出場する。今年2月に左足肉離れをして、現在も治療をしながら稽古を行っているという。「五輪前に比べたら状態は良くない」としたが「試合に出るからには言い訳できない。研究もされていると思うが、五輪チャンピオンとしての価値を上げて絶対的な王者になる。五輪で優勝したけど、世界選手権での優勝はない。体重別でしっかり勝って、世界選手権で優勝したい」と力を込めた。

 4年間通った東海大の柔道場がある「武道館」前で取材に応じたベイカーは、しみじみと大学生活を振り返った。「仲間と尊敬する井上(康生)監督がいる東海大で柔道と学業の両立ができたことを感謝しています。柔道だけでなく、人間としても成長できて感謝の気持ちでいっぱいです」。社会人として柔道家ベイカー茉秋の新たな挑戦が始まる。