【ヘルシンキ28日=高場泉穂】平昌五輪の国・地域別出場枠が懸かるフィギュアスケートの世界選手権が今日29日、開幕する。30日にショートプログラム(SP)に臨む男子の羽生結弦(22=ANA)は、公式練習のフリー曲をかけた練習で、今季の鬼門の「4回転サルコー-3回転トーループ」の連続ジャンプを失敗した後に演じるプログラムを披露した。万一のミスが出ても高得点を狙えるように備え、3季ぶり2度目の頂点を狙う。

 羽生は、先の先まで想定して滑っていた。現地入り3日目にして初めてのフリー曲を通す練習。最初の4回転ループで着氷が乱れ、続く4回転サルコーは着氷。3本目の4回転となる4回転サルコーと、3回転トーループの連続ジャンプは、4回転が1回転に終わり連続技にできなかった。

 だが、ミスにも悔しがる様子はなかった。失敗した分の得点を取り戻す“リカバリープラン”が頭の中にはあった。前日の練習で試した4回転トーループからの1回転ループ、3回転サルコーの3連続ジャンプだ。この日は4回転トーループの単発に終わると、最後の3回転半(トリプルアクセル)の後に、2つのジャンプをスライドさせ跳んだ。「本当は4回転トーループの後にしたかったんですけど、できなかったので、そういった意味でも考えながらやりました」。ミスを補おうと2つのプランを実践し「失敗はしたけど、本番にいきるいい練習ができた」と納得の表情だった。

 2位に終わった2月の4大陸選手権(韓国・江陵)での反省がある。「鬼門」の連続ジャンプで失敗した後、アドリブの構成で修正し、200点超えの高得点につなげたが、成功すれば15点以上という大きな得点源である3連続ジャンプが抜けていた。首位チェンとの合計の差はわずか3・75点。入っていれば優勝もあり得た。「あの時、3連続をつけることができなかったので、いろいろ練習をしてきました」。この1カ月間、万一に備えた準備に時間を割いてきた。

 3季ぶりの世界一返り咲きへの「意識はない」とは言う。だが、周到な準備を進めるフリーについては「やっと心に余裕がでてきた」と話す。「自分のできる限界値を最大限に持ってきた状態で、試合に挑むことが一番大事」。トップ選手が集結する場で、今季集大成の演技をみせる。