男子200メートル個人メドレーの萩野公介選手は、世界王者(昨年のリオデジャネイロ五輪の400メートル個人メドレー金メダル)として戦略を立てて決勝レースに臨みました。

 前日の準決勝は(全体2位の5コースで)いいコースに残って決勝で勝負するという狙い通り。この日の決勝レース前には、200メートル背泳ぎの予選も泳ぎましたが、そこはあえて12位通過と余力を残してのレースでした。リオ五輪はレースごとにチャレンジ、チャレンジという感じでしたが、今回は落ち着いたレースぶりが印象的で、これは強い選手ならではのレースの組み立ててでした。

 結果はケイリッシュ選手(米国)に後半逆転されての銀メダルでしたが、ヒジのケガから復帰してきたことを考えれば、上出来の結果だったと思います。金を狙っていただけに、レース後には悔しそうな表情を見せました。あの強気な姿勢もいいです。

 米国はフェルプス、ロクテがいなくなっても、新たな新星が出てきます。今回のハンガリーでは新しい選手が次々と台頭していますが、そう状況も踏まえ、萩野選手は今後への戦い方を組み立てていくことになる。来年はアジア大会、その次は世界選手権、そして3年後の東京五輪へ、しっかりつなげていくことでしょう。

 3連覇を狙った瀬戸大也選手は、全部のレースで勝負にいった印象です。状態は悪くなかったですが、前日のバタフライ(銅メダル)の疲れもあったように見えました。結果は5位でしたが、今後も萩野選手、ケイリッシュ選手とともにリードしていく存在に変わりはありません。次の400メートル個人メドレーに期待したいところです。

 また、女子200メートルバタフライの長谷川涼香選手は6位と残念な結果になってしまいました。昨年までは星奈津美選手がいた種目で、期待も大きくプレッシャーが大きい中、表彰台を逃しました。自分のレースができず悔しかったことと思いますが、ここは落ち込んだり考えすぎたりせず、涼香らしくこの経験を次に生かしてもらいたいと思います。

 (伊藤華英=北京、ロンドン五輪代表)

 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪は自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程修了。日大非常勤講師。173ンチ。